finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

シン・NISAが顧客本位に水を差す? 永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言②

文月つむぎ
文月つむぎ
2023.04.26
会員限定
シン・NISAが顧客本位に水を差す? 永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言②

リテール業務を営む金融機関において、みながみな、2024年1月から始まるシン・NISAを歓迎しているかというと、どうも違う。そもそもコモディティ化した商品しか扱えないNISAの収益性は低い。特に、低コストが条件づけられているうえに、採算度外視とも思われるコスト最安値競争が展開されているつみたてNISAにおいては、買付額が大きく積み上がるまでは、ネット証券においてすら運営コストを上回る収益を得ることは厳しい。

一例として、つみたてNISAの買付ランキングでトップを競う「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」を見ると、信託報酬(税込み 0.0968%)のうち販売会社の取り分は0.0374%の部分となっており、100億円の残高を積み上げても年間374万円の収益にしかならない。極端な話だが、この商品だけで販売に係る人件費、システムコスト、決済費用、宣伝費などをまかなおうとすると、数兆円規模まで残高を積み上げる必要がある。つみたてNISA全体の買付額が3兆円弱(2022年12月末時点)に留まる現状では、当面赤字が続くものと思われる。

よって、NISA制度は顧客を様々な投資の世界に導くフックツールと位置づけ、成長投資(旧一般NISA)枠で、ある程度手数料が確保できる商品を提供しつつ、その他商品・サービスのクロスセルに注力し、コストを吸収していくことになる。

非課税枠が大きすぎて「間口」にならず

政府が2022年11月にまとめた「資産所得倍増プラン」によると、現行のNISA制度の利用状況は以下の通りである。

①NISA を利用する個人の7割は年収 500万円未満

②NISA 利用者の過半数は世帯保有金融資産が 1,000 万円未満

③どの世代でも概ね2割の国民が口座を開設、30 歳代まではつみたてNISA、40 歳代以上では一般 NISA の開設が多い

④足元では、特に20 ~ 30 歳代の若年層の買付が伸長

おそらく大抵の顧客からすれば、シン・NISAの非課税枠が大きすぎて、NISA口座だけで証券取引が完結してしまう。年間の成長投資枠240万円、つみたてNISA枠120万円を使い切るほうが大変だろう。
そうだとすれば、岸田政権によるシン・NISAの「大盤振る舞い」は、リテール業務を営む金融機関にとっては必ずしも旨味のある制度とは言えないかもしれない。
永田町や霞が関においても、NISAの収益性を気にする声はある。一時的な事象であればまだしも、長期にわたりNISA取引の赤字を他の商品・サービスでカバーする運営は健全な姿ではないとの意見もある。サステナブルなNISA制度にするためには、顧客のみならず、運用会社にも、販売会社にも相応の果実をもたらすものでなければならない。何事もバランスが大事なのだ。

顧客がライフプランに合わせ、NISA口座とその他口座を使い分けて、適切にポートフォリオを構築できるようになるのが理想か。政府はNISAの抜本的拡充と併せて、金融経済教育の促進や中立的アドバイスの提供を掲げており、そのような顧客が増えてくることが期待されるが、それなりの勢力になるには、相当な時間がかかるだろう。

しからば、コストをかけてNISA口座保有顧客を囲い込んだ金融機関が、コスト回収を優先させて自分本位の営業を展開しないか、みなが目を光らせる必要がある。

安定的な資産形成を目指す顧客にとって、シン・NISAは最強のツールであり、真に顧客のためのツールとして活用されることを筆者は望む。「一人1口座」でもあり、どの金融機関にNISA口座を保有するかは、重要なポイントとなってくる。顧客には、正真正銘「顧客本位の業務運営」に取り組む金融機関を選んでほしい。

リテール業務を営む金融機関において、みながみな、2024年1月から始まるシン・NISAを歓迎しているかというと、どうも違う。そもそもコモディティ化した商品しか扱えないNISAの収益性は低い。特に、低コストが条件づけられているうえに、採算度外視とも思われるコスト最安値競争が展開されているつみたてNISAにおいては、買付額が大きく積み上がるまでは、ネット証券においてすら運営コストを上回る収益を得ることは厳しい。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #NISA
  • #フィデューシャリー・デューティー
前の記事
官製「中立的アドバイザー」が銀行・証券の脅威に 永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言①
2023.04.06
次の記事
アドバイスの中立性、当局の期待は「金融商品のミシュラン」?  永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言③
2023.05.09

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

成長と財源の両立に具体策はあるか?野党「NISA再強化提言」に見る多党制時代の“建設的議論”のあり方

2025.12.19

【文月つむぎ】運用立国議連の新「緊急提言」を読み解く!NISA、税制の見直しで対応が求められる3つのポイント

2025.12.04

【文月つむぎ】証券口座乗っ取り被害ゼロへ 金融庁の新監督指針を読み解く

2025.11.07

【文月つむぎ】片山さつき新大臣に贈る言葉

2025.10.28

【文月つむぎ】統合・再編議論の先は? 金融庁WGが照らす地域金融機関の未来

2025.10.20

【文月つむぎ】発足はいつ?高市政権下での金融機関の役割

2025.10.10

【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ

2025.10.06

【文月つむぎ】iDeCoがんばれ、NISAに負けるな! 
現状打破へ「7つの提言」

2025.09.22

【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント

2025.09.12

【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態

2025.08.29

おすすめの記事

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
③日本の金融リテラシー向上へ、将来の資産運用を支える人材を育てる

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの

finasee Pro 編集部

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(5)バランスファンドのモニタリング② リスクは標準偏差だけでなく下方リスクにも注目
「オルカン」が消えた松井証券の売れ筋、浮上した「ゴールド」「メガ10」「テック・トップ20」は2026年のトレンドか?
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(3)高市政権による「運用立国」再解釈と、証券・運用・メガ・システム業界へのメッセージ
2026年、日米金融政策の「中立金利」探索の行方とマーケットを揺るがす3つのリスク 楽天証券経済研究所・愛宕伸康氏に聞く
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(2)地銀を追い込むモニタリングの多視点化、“北風とインセンティブ”
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(1)存在しない終章と居心地悪そうな3施策
「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」
楽天証券の売れ筋上位を「オルカン」「S&P500」など主要インデックスファンドが占める理由は?
大和証券の売れ筋トップ3でパフォーマンスが際立つファンドは? 
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(5)バランスファンドのモニタリング② リスクは標準偏差だけでなく下方リスクにも注目
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(2)地銀を追い込むモニタリングの多視点化、“北風とインセンティブ”
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(1)存在しない終章と居心地悪そうな3施策
「金利ある世界」が到来する2026年、債券に投資好機も「ピークを待つと遅きに失する」理由とは
2026年、日米金融政策の「中立金利」探索の行方とマーケットを揺るがす3つのリスク 楽天証券経済研究所・愛宕伸康氏に聞く
「オルカン」が消えた松井証券の売れ筋、浮上した「ゴールド」「メガ10」「テック・トップ20」は2026年のトレンドか?
【第2回】製販情報連携の枠組みと実務
楽天証券の売れ筋上位を「オルカン」「S&P500」など主要インデックスファンドが占める理由は?
SBI証券のランキングで2026年を展望、「オルカン」「S&P500」に「メガ10」「ゴールドプラス」「日本高配当株」が迫る?
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
常陽銀行の売れ筋で「のむラップ・ファンド」が「ゴールド」や「NASDAQ100」より順位を上げた理由は?
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(5)バランスファンドのモニタリング② リスクは標準偏差だけでなく下方リスクにも注目
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【みさき透】SBI新生銀行の上場で現実味を増す「帝国の野望」――分配・解約資金をグループに還流、金利でも稼ぐモデルに
【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(2)地銀を追い込むモニタリングの多視点化、“北風とインセンティブ”
11月のトップは「電力革命」、静銀ティーエム証券の売れ筋の変化は新しいスターファンドの胎動か? 
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(1)存在しない終章と居心地悪そうな3施策
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら