リバースモーゲージの利用には注意点も少なくない

シニア層にとって一見、便利な仕組みのように見えますが、銀行が提供している仕組みである以上、利用者にとって100%有利なものはありえません。銀行が融資した資金と金利を有利に回収できる仕掛けが必ずあるはずです。逆に言えば、そこが利用者にとっての注意点でもあります。

まず、分譲マンションは担保になりにくい面があります。戸建てに比べて土地の評価部分が小さくなるため、経年劣化で資産価値が大幅に落ちる恐れがあるからです。分譲マンションを担保にできるリバースモーゲージもありますが、基本的には駅から近く、都心部にある築浅物件しか担保にならないのが普通です。

もちろん戸建てでも無条件に融資を受けられるわけではありません。担保となる不動産の所在地によっては審査が通らないこともあります。銀行からすれば、最終的に担保を売却して、融資した資金の回収を行うため、価値が下がるような不動産は担保にしたくないのです。

次に、不動産価値が急落した場合、担保として入れた不動産の評価額が見直されます。当初想定したのに比べて大きく値下がりした場合には、融資限度額が引き下げられてしまう恐れがあります。

また、融資を受けた人が生きている間に借入額が上限に達した場合は、それ以上の融資は受けられなくなります。一般的にリバースモーゲージの借入額の上限は、担保評価額の50~60%なので、都心一等地の戸建てならともかく、郊外にある戸建ての場合、土地の値段がよほど高くない限り、受けられる融資額も小さくなってしまいます。

例えば担保不動産の評価額が5000万円だったとしても、その50~60%だと、借入上限は2500万円から3000万円にしかなりません。しかも、担保不動産を評価するにあたって、実勢の価格に比べて安めに見積もられるケースも考えられます。これならむしろ、リバースモーゲージを利用するよりも、担保となる不動産を売却した方が、手にできる資金はより大きくなるはずです。担保の評価額を安めに見積もり、さらに借入限度額も低めに設定することによって、銀行側はより大きな収益が得られるわけです。

ちなみに、リバースモーゲージの契約者が亡くなると、担保にしていた家は銀行によって売却され、融資資金が回収されるので、家族・親族がその自宅を引き継ぐことはできません。つまり、先祖からの土地を代々守っていきたいと考える人には、絶対と言ってもいいくらい不向きな仕組みです。利用者にとって不都合な点をしっかり吟味したうえで、利用するかどうかを判断することが肝心です。