5月19日付日本経済新聞の夕刊トップに、こんな見出しが載りました。

「自宅担保融資が拡大」。

これは持ち家を担保に入れて、銀行から融資を受ける仕組みのことで、一般的には「リバースモーゲージ」と称されています。この利用が近年増加傾向にあり、2020年の推定融資残高は1600億円。過去3年間で500億円程度、増えていると書かれています。

注目が高まるリバースモーゲージの仕組みとは?

仕組みを簡単に説明しておきましょう。

リバースモーゲージは自宅を担保に入れ、その不動産評価額に応じて銀行から一定額の融資を受けます。毎月の返済額は利息部分のみで、契約者が亡くなった時、担保に入れた自宅を売却して借入金の返済に充当します。

主な利用者は高齢者です。金融機関によって若干の違いはありますが、利用者には年齢制限が設けられており、50~55歳くらいから利用できます。借り入れたお金の使い道は生活費への充当が中心になるため、融資を受けた資金の使い道は原則として自由です。また融資の限度額は担保となる不動産の評価額にもよりますが、最低300万円から最高で1億円程度になります。

老後に「豊かさ」を求めるといくら必要になる?

いささか旧聞に属する話になりますが、2019年の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書を契機に話題となった「2000万円問題」以降、老後資金に対する関心が高まってきました。公的年金で生活を維持できるなら問題はありませんが、ある程度「豊かさ」を求めた老後の生活スタイルを実現しようとしたら、公的年金の支給額では足りません。

もちろん「豊かさ」の感じ方は人によって違いますので一概には言い切れませんが、家計調査報告の数字によると、高齢無職世帯(夫婦のみ世帯)の平均支出が月額で約24万円。これに対して老後の主な収入源となる公的年金の支給額は、国民年金と厚生年金を合わせた月額で約20万円程度ですから、この比較で言えば不足額が生じてきます。この不足分を、現役時代に積み上げてきた現預金などの金融資産で穴埋めする形になります。

金融広報中央委員会の「家計と金融行動に関する世論調査」の2020年版によると、60歳代で金融資産を保有している世帯の金融資産保有額の平均値が1872万円となっていますが、これはあくまでも平均値なので、実態にそぐわない部分もあると思います。より実感に近いところで中央値を見てみると、60歳代の金融資産保有額は860万円です。

仮に、860万円から毎月4万円ずつ取り崩した場合、65歳を起点にすると、83歳まではもつ計算になります。

とはいえ、寿命がさらに延びることを前提にすれば、おそらく足りないと思う方が大半でしょう。だからこそ、リバースモーゲージが注目されているのです。自宅を担保に入れて生活資金の不足分を調達できますし、状況次第では一生涯、担保に入れた自宅に住み続けることもできます。