アクティブでの経験値でクオンツの「当たり前」を見直す

――考えてみれば、アクティブの経験をお持ちのクオンツのマネジャーはとても珍しい存在です。とても貴重な経験をされたのですね。そして念願のクオンツ担当へ異動となり、このマザーファンドを引き継がれたと。

引き継いだタイミングはリーマンショック前の2006年でした。いわゆるバリューファンド全盛期が終焉を迎える頃で、このファンドも苦戦を強いられていたところに、2007年にはパリバショック、2008年にはリーマンショックが起こり、統計的にはあり得ない幅で一日の値動きが変動するのを目の当たりにしました。

――逆風のスタートですね……。その中で、魚谷さんはどのようにご自身の色を出されていったのですか?

クオンツ運用は、データの高度な分析を通じてモデル(運用の基本戦略)を組んでいくため、基本的には「データありき」の世界です。そこに、過去にアクティブ運用で培った、市場環境や企業分析といったデータでは測れない要素を組み入れることで、「安定的な収益確保」という目的によりフィットした運用を実現できていると思っています。

具体的に言うと、「データの定義付け」のアップデートです。今までになかったサービスが生まれたり、既存の会社でも業態が大きく変化したりとどんどん産業構造が変革していく中で、昔のままになっている定義を随時、新しく更新しています。

例えばZOZOは小売りセクターに属していますが、同じセクターにはファーストリテイリングなどが存在します。衣服を売るという点では一緒でも、ZOZOはオンライン、ファーストリテイリングの主戦場は実店舗と、同じ土俵で比較し切れない部分が大きく、マーケットの評価も全く違ってきます。こうした部分がリスクとして影響してしまうので、ZOZOは小売業ではなくオンラインサービスの会社と定義を変えるわけです。