新型コロナウイルス(covid-19)の感染拡大による影響が、地価にも及んできました。

国土交通省が調査・公表している「地価LOOKレポート」は、全国100地区の高度利用地区における地価を不動産鑑定士が評価し、それを国土交通省が取りまとめたもので、毎年1月1日、4月1日、7月1日、10月1日の計4回、調査が行われています。対象となる地区は東京圏43地区、大阪圏25地区、名古屋圏9地区、地方中心都市等23地区の合計100地区における定点調査です。

11月19日に公表された同レポートは、10月1日時点の地価動向で、これを前回調査である7月1日時点の地価と比べたところ、100地区のうち45地区で地価が下落したことが判明しました。

多くの「高度利用地区」で地価が下落傾向に

ちなみに「高度利用地区」とは、低層の建物がたくさんあり、土地が細分化されている人口密集地帯において土地をひとまとめにして再開発を行い、高層ビルなどを建てられるようにする土地のことです。つまり再開発される可能性が高い地区ということになりますが、その地価動向は他の地価に先行した動きになりやすいため、今後の地価動向を把握するうえで参考になります。

2019年1月1日~4月1日以降、前回調査に対して地価が上昇した地区、横ばいの地区、下落した地区の数は下のグラフに示した通りです。2020年1月1日~4月1日の調査で、それまで97あった上昇の地区数が73に減り、横ばいの地区数が23に急増。さらに下落した地区数が0から4に増え、それまでの地価上昇ペースが明らかに頭打ちしたことが見て取れます。

この時期、まだ日本で緊急事態宣言は発令されていませんでしたが、訪日外国人客数の推移などを見ると、2月あたりから減少が目立つようになってきました。1~3月の訪日外国人客数は、

1月……266万1022人(▲1.1%)
2月……108万5147人(▲58.3%)
3月……19万3658人(▲93.0%)

となっています。この数字からも、緊急事態宣言が発令される前から、インバウンドをはじめとして人の動きが極端なまでに鈍り、それが景気にマイナスの影響を及ぼしたことが推測できます。当然、景気のスローダウンは地価にも影響を及ぼします。