退職者の家計に押し寄せる怒涛の税金と社会保険料

サラリーマンの場合、税金や社会保険料は給与や賞与から天引きされる仕組みです(より正確に言うなら、所得税に関しては“みなし額”を差し引いておいて年末調整を行っています)。こうした事情もあって、サラリーマンにはご自身の納めている税金や社会保険料の額に比較的無頓着な方が多いようです。

そういう方が陥りやすいのが、今回ご紹介する「定年後のマネー 3つの落とし穴」です。要は定年後に発生する税金や社会保険料の支払いの話なのですが、中には現役時代の収入をベースに算出されるものもあって、これがなかなか厄介です。退職前に高い給与を受け取っていた人だと、支払い額が3つ合わせて7ケタに及ぶケースもあるのです。

その1 住民税は退職時期によって辞めた後2年間請求される

最初の落とし穴が「住民税」です。退職した先輩から、「会社を辞めると、次の年の住民税が大変だよ」といった愚痴を聞かされたことがないでしょうか? 所得税がその年の所得に対して課税されるのに対し、住民税は前年の所得をベースに計算して、6月頃に税額決定・納付書が届くことになっています。会社を辞めて無収入であっても、前年分の住民税を払わざるを得ないのです。

住民税の金額はお住まいの自治体や家族構成によっても変わりますが、年収1000万円のサラリーマンで60万円程度と言われます。4回に分けて支払うこともできますが、このケースだと1回当たりの金額が15万円に上ります。60歳でリタイアし、年金も受け取っていない人にとっては手痛い出費となりそうです。

さらにこの“住民税攻撃”、1年で終わるとは限りません。年度末の3月に退職したケースでは、退職した年の6月に前年分の、さらに次の年の6月には辞める直前の1~3月分の納付通知書が送られてきます。その度に大事な老後資金をすり減らしていくことになりかねないわけです。

その2 国民健康保険料も住民税並みの高額になる可能性が!

住民税同様、リタイア翌年の家計を圧迫するのが「国民健康保険料」です。

日本は“国民皆保険”の国ですから、退職して会社の健康保険組合を脱退した後も何らかの保険に加入する必要があります。その場合、多くの人が選択するのが国民健康保険(国保)です。

国保の保険料は前年の世帯収入と世帯の中の加入者数を基に計算されるので、上限はあるものの、基本的には前年の収入や加入者数が多いほど保険料負担が重くなる格好です。国保の保険料は特にお住まいの自治体による格差が大きく(一般に、高齢化が進み医療費が高止まりしている地方のほうが高い傾向があります)、前述の年収1000万円のケースだと年間の保険料は80万円程度になります。

もっとも、健康保険は「退職『前』にチェック!リタイア後、意外にもらえる補助金&給付金」の回でお話ししたように、退職後2年間に限り会社の健康保険に「任意継続」の形で加入し続けることができます。現役サラリーマンは保険料を会社と折半していますが、任意継続の場合は全額自己負担となるため、一概に国保とどちらがお得とは言えません。

会社によっては退職前に両方の保険料の比較をしてくれるので、そこで検討する手もあります。

その3 退職時に妻が60歳未満だと妻の国民年金保険料負担も発生

住民税や国民健康保険料ほど家計へのインパクトは強くないにしても、妻が専業主婦のサラリーマンにとって新たな負担となるのが妻の国民年金保険料です。

サラリーマンの配偶者である専業主婦は、国の年金制度で言うところの「第3号被保険者」となり、直接保険料を負担しなくても、65歳以降は自営業者やフリーランスと同じ老齢基礎年金が受給できます。しかし、自身が60歳(国民年金の保険料払い込みが終了する年齢)に達する前に夫がサラリーマンを辞めてしまうと、自分で国民年金に加入して、保険料を負担する必要が出てきます。

ちなみに、2020年度の保険料は月額1万6540円です。この程度なら、毎月コツコツ払っていくことも可能かもしれません。とはいえ、これまでゼロだった妻の年金保険料がいきなり発生するわけですから、負担感は大きいのではないでしょうか。しかも、納付は妻が満60歳になるまで続くのです。

手元不如意だからといって、民間の個人年金保険のように払い済み保険(以降の保険料の支払いを中止し、その時点での解約返戻金を基に金額を減らした年金に変更すること)にするわけにはいかないのが残念なところです。