退職後も健保のメリットを享受できる「任意継続」

会社の健康保険には、保養所の利用や人間ドックの受診など、お得な助成や給付の制度が多数用意されています。健康保険の高額療養費(入院や手術などで医療費の自己負担が月ごとに一定額を超えたとき、申請すれば超えた分の払い戻しが受けられる制度)の限度額は一般的なサラリーマンだと1カ月につき8~9万円程度ですが、大企業の健康保険組合ではそれが2~3万円に抑えられており、さらに差額を健保組合が負担してくれるところもあります。社員が扶養する家族も、保険料を負担することなく、健保組合の保険証を使って医療サービスが利用できます。

定年で会社を離れる人は健保組合からも脱退し、こうした特権を手放すことになります。しかし、健康保険には「任意継続」という制度があり、退職後2年間は引き続き加入することができます。注意したいのは、現役時代は健康保険料の半分を会社が負担してくれていますが、任意継続だと全額が自己負担となるため、保険料が高額になってしまう可能性があることです。

なお、任意継続を利用する場合は資格喪失日(退職の翌日)から20日以内に手続きをする必要があるため、希望する方はこのタイミングを逃さないようにしないといけません。

病気の「初診日」がカギ 定年退職前には必ずメディカルチェックを

体育会系で健康には自信があるという人でも、還暦近くなると何かしらの病気を発症することが少なくないようです。例えば、患者数が320万人を超え、「現代の国民病」と呼ばれている糖尿病。あまり考えたくないことですが、罹患すると将来的に腎不全を併発し、人工透析が必要になる可能性があります。実際、透析開始の原因のトップが「糖尿病性腎症」だと言われています。

人工透析者は国の「障害年金」の受給対象になります(保険料未納期間があると対象外になることもあります)。サラリーマンの場合は病気の「初診日」が厚生年金加入期間中なら、「障害基礎年金+障害厚生年金」という2階建ての年金が受け取れます。だからこそ、元気な方でも、定年退職前には入念なメディカルチェックを受けておくべきなのです。

万一このチェックで糖尿病と診断されたとすると、会社を辞めてから人工透析が必要になったときに、障害基礎年金と障害厚生年金が受給できます。障害年金は障害の程度に応じて1~3級に分類され、1級か2級の認定を受けると2階建ての障害年金が受け取れる仕組みです(3級は障害厚生年金のみ)。

これまでの実績を見ると、がん、心筋梗塞、大動脈弁狭窄症、脳梗塞、脳出血、脳血栓(言語障害)、気管支喘息、肺気腫、ネフローゼ症候群、肝硬変、緑内障、白内障、網膜色素変性症、重症筋無力症、進行性筋ジストロフィー、関節リウマチ、人工肛門、人工膀胱、鬱病、統合失調症など、多種多様な病気・症状の人が認定されています。