「優しいアリ」のいない世界で、幸せに長生きするには

官民一体となっての「老後の生活資金の柱を企業年金にシフトしよう」という動きの中で、優遇され過ぎているという声の強い「退職所得控除」は、将来見直される可能性が高いと思っています。なぜなら、損得計算で多くの人が退職金を一時金で受け取ってしまっているからです。

マスコミでも報道されているように、国の年金は将来、現役時代給与との比率である所得代替率が50%程度になると言われています。実際、かなりの確率でそうなると私は考えています。その時に、キリギリスのように夏にエサを食べてしまうのか、アリのようにエサを蓄えておくのか――。

アリが勤勉で、キリギリスが怠け者だというのはおとぎ話の世界です。成虫となったキリギリスの寿命はたった2カ月ほど。一方、アリは女王アリを守り、将来に亘って子孫を反映させなければならず、冬にも大量のエサが必要になります。だからエサを蓄えているわけです。そもそもお互いの生き方が違います。

冬が来るのを考えず、キリギリスの真似をしてしまうアリは冬を越せません。隣の巣から情けをかけてくれる優しいアリがいればよいのですが……。

「得する退職金の受け取り方」が気になった方にとっても、大事なのは、今の時点でどれだけの資金が必要で、将来の老後にどれだけの資金があればよいのかを確認しておくことです。歌って過ごしていれば終わるほど、私たちの一生は短くないのですから。