投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、足利銀行。

足利銀行の投信売れ筋ランキング(店頭販売件数)の2026年8月は、前月に続いて「のむラップ・ファンド(積極型)」がトップを維持した。第2位には前月トップ10圏外から「インベスコ 世界厳選株式オープン(世界のベスト)」が急浮上し、第3位には「のむラップ・ファンド(普通型)」が入った。「のむラップ・ファンド」シリーズは1位・3位・5位・10位と計4本がトップ10に入った。「のむラップ・ファンド」シリーズが不安定な市場環境の中で揺るぎない人気を維持し、投資家の“運用の軸”として機能している。また、「世界のベスト」が急浮上したことに象徴されるように、米国株一極集中への警戒が強まり、世界株式への分散志向が再び高まっているようだ。

※足利銀行サイトのファンドランキング「店頭月間販売件数」に基づいて編集部作成。期間:2026年8月1日~8月31日。
https://www.wam.abic.co.jp/contents/C130129/wam3/1/pc/fundrnk.html?_com_id_product=1&_com_id_company=C130129&date=202609241732&date=202609241732&_biz_id_ranking=01&_biz_rankingseq=1&_com_id_screen=91505001&_com_id_session=02202609240437733742

「のむラップ・ファンド」が選ばれた理由

「のむラップ・ファンド」シリーズ(設定は野村アセットマネジメント)は、いわゆる「ラップ口座」のように世界の株式、債券、REIT(不動産投信)などに分散投資するポートフォリオをリスク水準に応じて最適な組み合わせに配分するファンドだが、市場環境がその本質的な強みを浮き彫りにしたようにみえる。2026年8月は、米10年国債利回りが5%台に乗せ、原油価格が100ドル超まで上昇し、インフレ再燃懸念が強まるなど、投資家心理を動揺させる材料が多かった。株式市場は上昇一服となり、為替介入後の円高リスクも意識される局面だった。

「のむラップ・ファンド」は、積極型・普通型・分配金受取型など、投資家のリスク許容度や資金ニーズに応じて迷わず選べる構造を持っており、投資家は運用に関するさまざまな判断をファンドにまかせて、自らのリスク許容度や資金ニーズだけを考えて投資対象を選ぶことができる。複雑、かつ、不透明な投資環境にあっても選択に困らないというメリットがある。

しかも、そのパフォーマンスを振り返ると、「のむラップ・ファンド(普通型)」で2026年8月末時点の過去1年リターンが14.85%、「積極型」は23.11%という成績になっている。「積極型」のリターンの水準は、現在運用されている「追加型/海外/株式」に分類される海外株式ファンドの平均の26.01%と比較してそん色がない。しかも、リスク(標準偏差)の水準は、「のむラップ・ファンド(積極型)」で1年11.31に抑えられているのに比べ、海外株式ファンドのリスク平均は19.59と「のむラップ・ファンド」の2倍近いリスクを取っている。価格変動が安定的で、かつ、リターンも海外株式ファンドの水準と変わらないのであれば、継続的に「のむラップ・ファンド」に投資し続けようという気持ちになるだろう。

「世界のベスト」急上昇は何を意味する?

一方で、「世界のベスト」(設定はインベスコ・アセット・マネジメント)が急浮上した背景には、米国株一極集中への警戒があると考えられる。2026年は半導体関連銘柄が市場をけん引する一方で、大型テクノロジー株の上昇率が鈍化し、投資家は高成長テクノロジー株への過度な依存に慎重になりつつある。米国株の比率を落とし、世界株式で分散を確保するという選好の変化が進む中で、「世界のベスト」は世界の成長企業を厳選するアクティブ型として、米国偏重を避けたい投資家にとって“分散の受け皿”として機能している。

「世界のベスト」のポートフォリオは、国別配分で米国45.3%、イギリス22.6%、オランダ7.5%、カナダ4.4%などとなっており、「全世界株式(オール・カントリー)」インデックスファンドの米国62.8%、日本5.0%、台湾3.2%、イギリス3.1%とは大きく異なっている。組入上位業種も金融25.7%、資本財・サービス25.3%、情報技術11.1%などで、全世界株インデックスの情報技術30.5%、金融16.6%、資本財・サービス10.4%とは異なる(組入比率は2026年8月末時点)。「米国株」と「ハイテク株」に集中していた投資先を分散したいと考えた時に、「世界のベスト」のバランスのとれたポートフォリオが魅力的にみえるのだろう。

こうした動きを総合すると足利銀行の投資家は、明確に二極化した選好を示したと言える。不安定な市場で安心感を求める層は「のむラップ・ファンド」を選び、米国株一極集中を避けたい層は「世界のベスト」へと視線を移した。この二極化は、投資家がいま、どこに安心感を求めているのかを示す構造的な変化といえ、来月以降のランキングにも影響を与える可能性が高いと考えられる。

執筆/ライター・記者 徳永 浩