一変した夫婦の立場
大樹は自身が筋の通らない主張をしている自覚はあった。だが、傷つく真由美の様子に申し訳なさを滲ませつつも、まるで不運なドラマの主人公を気取っているかのような姿勢を崩さなかった。
連日に及ぶ不毛な話し合いで夫婦ともに心身をすり減らした末、大樹は「二度と接触しない」と言い切り、その場の追及を切り抜けた。
しかし、大樹は不倫をやめる気など毛頭なかった。真由美の前では反省したふりをしながら、会社では不倫相手と「妻にバレちゃったから、これからは会社内だけでうまくやろう」と関係を継続していたのだ。
大樹は「真由美はおとなしい性格だから、これ以上、事態が悪化することはない。時が解決してくれる」と高をくくっていた。ところが数週間後、真由美の雰囲気が一変する。
夕食後、真由美は冷たい眼差しで大樹を見つめ、静かに告げた。
「友達のすすめで、弁護士に相談してて。不倫相手の自宅と会社に内容証明を送る準備を進めているわ。カーナビに不倫相手の家の住所もバッチリ残ってたし……会社の人事部にも、職場内での不適切な関係として正式に申し入れるつもりだから」
顔から血の気が引く大樹。真由美はただしおらしく泣いてばかりの弱い妻ではなく、子どもと自分の生活を守るために具体的な行動を起こす決意を固めていたのだった。
慌てた大樹は、すぐに不倫相手に連絡をとるのだが……。
●何でもオープンで仲が良かった真由美と大樹。しかし大樹が不倫にハマり、発覚してからも別れたフリをして関係を継続し真由美を裏切り続けた。真由美の反撃に不倫相手がとった行動は……後編【「私は上司のあなたからハラスメントを受けただけ」不倫相手の豹変ぶりに戦慄…身勝手な夫が痛感した“自分の愚かさ”】で詳説します。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
