飲酒量まで変わった裕樹
食後、裕樹は手慣れた様子で缶ビールを開けた。あっという間に1本空けると、また新しい酒に手を伸ばす。最近はこんな夜が増えている。
「上は現場のことなんか何もわかってないんだよ」
「また何かあったの?」
「急にやり方変えるとか言い出してさ。振り回されるこっちの身にもなれってんだ」
「大変そうね」
「ああ、ほんとやってられないよ」
裕樹はさらに酒をあおり、しばらく会社への不満をこぼしたあと、赤い顔で先に寝室へ向かった。
「寝る」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
勝美は1人で食器を洗いながら、静かになったリビングを振り返った。
「前は、あんなことを言う人じゃなかったのに」
水を止めると、窓の外から入った夜風がカーテンをわずかに揺らした。裕樹はきっと疲れているだけだ。そう思うことにして、勝美は濡れた手を布巾で拭った。
子どもの塾選び
夕食の途中、裕樹が不意に箸を止め、向かいに座る拓海へ目を向けた。
「拓海も、そろそろ塾くらい考えた方がいいんじゃないか」
「……そうね。確かに4年生だと、通ってる子も多いけど」
「えー、塾? 行きたくなーい」
拓海は学校の成績が悪いわけではない。むしろテストでは上の方に入ることが多く、勝美は今すぐ焦る必要はないと思っていた。
「今のうちからやっておいた方がいいんだよ」
「でも、遊ぶ時間がなくなるのは嫌だ」
放課後や休日にまで勉強したくないという拓海の気持ちは、勝美にもわかる。それでも、これから授業内容が難しくなることを考えれば、学習習慣をつけるのも悪くない。少し考えてから勝美は優しく言った。
「拓海、試しに行ってみたら? どうしても嫌なら、あとからやめればいいじゃない?」
「うーん、まあ試すだけならいいけど」
「それじゃあ、拓海に合いそうなところを探してみるから」
「ちゃんとしたところにしてくれよ」
裕樹の言い方が少し引っかかったが、勝美は黙ってうなずいた。
「ええ、任せて」
