「30を超えてアイドルの推し活してるのは痛い」

「実は、先方からもう一度だけ会いたいという話があったんですよ。あまりにも言いたい放題言ってしまったので謝罪したいと」

「はあ、なるほど。確か、『35にもなってアニメを見てるのはキモい』って言われたんだっけ」

「ええ、そうです」思い出すだけでも不愉快なのだろう、桜井は返事をしながら表情を曇らせた。

「それで、もう一回会ったんですけどね」

「うん。それで?」

「で、今度はこっちも言いたい放題言ったんですよ。向こうは、女性アイドルグループの推し活が趣味と言っていたので、『そっちこそ、30を超えてアイドルの推し活しているのは痛い』って、言ってやったんです」

「え、大丈夫か、そんなストレートなことを言って」

「僕はもうこの先がないと思っていたから、最後に言いたいことを言ってやれって思ったので、もうこれで決裂だな、二度と会うこともないな、くらいに思ってたんですよ。けど……」

「けど?」

「むしろそれが良かったらしくて、『本当のことを言ってくれてありがとう』って言われて……」

「ええ、さすがにそれはびっくりだな」

「そうなんですよ。それがきっかけでいろいろ深い話をするようになって、むしろ仲良くなってしまって……」

桜井はそう言って後頭部をかいた。照れ隠しのジェスチャーのようだったが、あまり照れてはおらず、むしろ楽しそうだった。

「そっか。雨降って地固まるっていうけど、そんな感じだったのかもな。まあ、とにかく、おめでとう! 今日は奢るからいっぱい飲んでくれよな!」

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。