「変な宗教にでも入ったんじゃないかって」
ナムルの盛り合わせ、チョレギサラダ、キムチ、カルビ、ロース、ハラミ……。注文した品が次々に運ばれては、テーブル上に並べられていく。
早速ビールで乾杯すると、後藤は、肉を焼き始めるのも待たずに桜井に質問したのだった。
「最近、なんか調子よさそうだね。元気そうというか、明るくなったよな。会社でもいつも自信を持って堂々としてるし」
「そうですか?」口ではそう言うものの、桜井はなにか思うところがあるのか、自信ありげにニヤッと笑ってみせた。
「そうだよ。つい先月まで落ち込んでいたのに。急変したからみんな驚いてるよ。何か変な宗教にでも入ったんじゃないかって」
「ひどいなあ。僕がそんなのやるわけないじゃないですか」桜井は怒った風に言ったが、その態度にも余裕が感じられた。
「それは冗談だけどさ。何かあったのかなと思って。確か、婚活を続けてたよな。もしかして結婚が決まりそうとか?」
「そのまさかなんですよ」桜井は晴れ晴れとした顔で言った。
「そっか、それは良かった、おめでとう!」
後藤はお祝いに、桜井のためにビールを追加注文すると、言った。
「けど、随分急に決まったよね」
「ええ。実は、この前、この店で相談した、あのIT企業勤務の女性となんですよ」
「え? あんなに怒ってたのに?」
後藤は目を丸くした。
