萩原真一は39歳。埼玉県南部に本社を構える物流企業で働いている。

大学を出て以来、仕事については真面目につとめてきた。ただ、人間関係があまり得意ではなかったので、仕事以外の時間は唯一の趣味のゲームに注いできた。そんな生活を送ってきたこともあって、もうじき40歳を迎えるのにいまだに独身のままだった。

兄が先に結婚し、実家をついでいるとはいえ、両親も真一の将来を心配し始め、結婚相談所のパンフレットを送りつけてくるなど、プレッシャーをかけてきてもいた。

「さすがに結婚相手を探すフリくらいはしよう」

そう思った真一は、勇気を振り絞って、とある結婚相談所を訪れたのだった。

勇気を出して訪れた「港区の結婚相談所」

金曜日の夕方18時過ぎだった。仕事終わりの萩原真一が訪れたのは、東京港区にある瀟洒なビルだった。

真一が申し込んだ結婚相談所は、そのビルの7階に入居していた。ただ、相手を紹介してもらうには、まず、相談所の担当者と直接面談してファイルを作成する必要があるとのことだったので、真一は重い腰をあげて港区までやってきたのだった。

エレベーターで7階に上がり、受付で名前を名乗ると、アンケート用紙を渡され、待合室を案内された。

アンケートには名前や勤務先、年収、相手の希望年齢などを書く欄があった。あらかじめ用意していた答えをさっさと記入すると、真一はあたりを見渡した。壁にはチャペルの写真が飾られ、サイドテーブルにはブーケに使われそうな白い花が活けてあった。

真一はマガジンラックに並べられた結婚相談所のパンフレットを手に取る。

「結婚したいアラフォー、アラフィフ男性が気をつけるべき点」

「好印象を与える3つのコツ」

といった文言が並んでいた。

――やっぱり、結婚を決めるまでに、かなり大変な思いをさせられそうだな……。

真一は先々の苦労を思い暗澹たる気持ちにとらわれた。