<前編のあらすじ>

不妊治療の末、ようやく妊娠した朝美。つわりに苦しみながらも喜びをかみしめていたが、夫・健也は晩酌を再開し、以前より酒を楽しむようになる。朝美は不満を覚えながらも、飲酒自体を責めたいわけではないと自分に言い聞かせていた。

数カ月後、朝美は健也と一緒に妊婦健診へ行く約束を楽しみにしていた。ところが前夜、健也は友人とオクトーバーフェストへ行く予定を入れていたことが判明。健診の約束を忘れていた健也は友人との飲み会を優先しようとする。

朝美は、自分は妊娠後ずっと食事や体調に気を配っているのに、健也には父親になる自覚が感じられないと怒りをぶつける。しかし翌日、健也は謝ることなく予定どおり出かけ、朝美は1人で妊婦健診へ。赤ちゃんが順調に育つ姿に安堵する一方、本来なら夫婦で分かち合うはずだった喜びを思い、健也への怒りを募らせた。

●前編【「俺にも付き合いがあるんだよ」妊婦健診より飲み会を優先する夫…4年半の不妊治療を経た妻が絶句】

夫婦の会話が消えていく日々

オクトーバーフェストの一件があってから、夫婦の会話はめっきり減った。健也が話しかけても、朝美は短く返事をするだけ。一緒に食事をしていても、ほとんど会話が続かない。

ある朝、健也が身支度を整えながら口を開いた。

「なあ、今日の夕飯って何?」

「まだ決めてないけど」

「そっか。じゃあ、何か買ってこようか?」

「好きにすれば?」

冷たく返すと、健也は不満そうにこちらに向き直った。

「なあ、いつまですねてるんだよ。もうあれから何日も経ってるだろ」

「別に。私は普通だけど」

「それが普通かよ。1日中そんな態度を取られるこっちの身にもなれよ」

朝美は答えず、朝食の食器を片付けた。

先日約束を破った件は、健也にとって、もう終わったことらしい。問題を問題として捉えていない相手と何を話せばいいのか、朝美には分からなかった。

やがて健也は、以前にも増して外で飲むようになった。

「今日、会社の連中と飲んでくるから」

「……そう」

「どうせ家に帰っても、朝美はろくに口きいてくれないしな」

健也はいら立った様子であてつけのように口にし、出勤していった。

それから健也は週に何度も飲みに行くようになり、帰宅が深夜になることも珍しくなくなっていた。休日まで友人と飲みに出かけるようになり、夫婦で顔を合わせる時間はますます減った。

朝美は呆れていたが、また口論になれば余計なストレスがかかる。「今は自分の体調と赤ちゃんのことを優先しよう」と考えた。