日本銀行は7月の金融政策決定会合(MPM)で予想通り利上げを見送りましたが、同時に公表された「展望レポート」と植田総裁の記者会見で9月利上げに向けた布石がしっかり打たれました。7月31日には日米協調介入が実施されましたが、その狙いと日銀の9月利上げとどんな関係があるのか、今後の注目点と合わせ詳しく解説します。
※本稿は、8月5日に「トウシル」に掲載された人気エコノミスト愛宕伸康氏の記事「日米協調介入が示す長期金利抑制の本気度、日銀9月利上げの可能性高まる」を抜粋・編集しています。
「展望レポート」と植田総裁からのメッセージ~2%を超えて上振れるリスク~
7月30〜31日に行われた日本銀行の金融政策決定会合(MPM)では、予想通り利上げは見送られました。しかし、これも予想通りですが、同時に公表された「経済・物価情勢の展望(2026年7月)」(通称「展望レポート」)と植田和男総裁の記者会見で、次回利上げに向けた布石がしっかり打たれました。
前回のレポート(「7月、日米中銀は政策金利据え置きへ。次の利上げ時期の読み方」)では、今回の「展望レポート」を見るポイントとして、以下の点を指摘しました。
6月声明文に記した文言を今回の「展望レポート」にどう落とし込むのか。仮に、「消費者物価の基調的な上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振れていくリスク」を引き続き強く意識しているような書きぶりになるのであれば、10月利上げよりむしろ9月利上げを意識すべきかもしれません。
今回公表された「展望レポート」では、「基本的見解」の「概要」に、そうした文言がきちんと盛り込まれています(図表1の下線部分)。
<図表1 7月「展望レポート」の「基本的見解」<概要>のリスクバランスに関する表記>
加えて、「4.金融政策運営」のパートにも、利上げが早いことを示唆する極めて重要な文章が追記されました(図表2)。
<図表2 7月「展望レポート」の「金融政策運営」に関する記述>
すなわち、図表2の中の下線を引いた部分、「とくに、基調的な物価上昇率が2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になると考えている」です。
一言一句に意味を持たせる日銀がわざわざ「とくに」と断っているわけですから、素直に次回利上げに向けて物価上振れリスクがポイントだと受け取れば良いのですが、さらに付け加えると、MPM後の記者会見で植田総裁はこのくだりを強調した上で、「次回以降の決定会合において、しっかりと議論してまいりたい」と繰り返し述べました。
この「次回以降」と念を押しているところがまた重要なポイントです。なぜ「今後の」ではだめなのか。普通に作文すれば、「今後の決定会合で」になりませんか? なりますよね。それが、なぜ「次回以降の」なのでしょうか。実は、ここにも日銀文学の機微があります。
あえて「次回以降」にすることで「9月MPM」を意識させる。こうしたサブリミナル効果を通じた情報発信も、日銀からの重要なメッセージなのです。
