国民の一人一人をも幸にする「投資信託」
日本初の投資信託専門誌『投資信託事情』の創刊号には次の言葉が刻まれている。
「日本経済にしめる投資信託の力は日増しに大きくなりつつあり、この力を無視しては、証券界の動向はもちろんのこと、産業界の動向すらも語れない状態である。(中略)その健全な運用と発展は、おのずから証券界も産業界も、そしてまた国民の一人一人をも幸にするからである。(中略)正しい啓蒙と健全な運用、それによる一層の発展こそ、今日の投資信託に課せられた最大の使命であり、ひいては日本経済繁栄の道でもある」(一部抜粋)
個人の資産形成や社会の好循環を促すその力は当時よりもさらに大きく、確かなものとなっている。だからこそ今、資産形成の叡智である投資信託を全てのステークホルダーがともに大切に育て、活用していく未来を描くことが求められている。
島田知保氏メッセージ:投資信託について伝えたいこと
医療や科学など多くの専門知識を要する分野と同様に、金融もまた提供者と受け手との間にある「情報の非対称」を前提に営まれてきました。社会が右肩上がりに成長している間は、働いて銀行にお金を預けることが人生の安泰につながりましたが、少子高齢化・成熟化社会では預貯金のみで生涯必要な資金を積み上げることは困難です。社会が変わっても、人のマインドセットも、社会の仕組みや行動原理もアップデートしきれずに時間だけが過ぎて日本は世界の変化に遅れを取り「失われた30年」などと言われました。ようやく経済が活性化してきたようですが、その間に進んだ「二極化」や財政赤字は将来を見通しにくくしています。
とはいえ、拙速に投資に踏み込んでも、市場や株価を「読んで」「勝つ」ことが投資であるとの誤解を抱いて挑んで暴落に出合うと長続きせず、結局やめてしまうという人も大勢見てきました。近年好調な株式市場ですが、これからも大きく下がる時期もあるでしょう。だからこそ、相場の「価格」ではなく企業の生み出す「価値」を見て、じっくりと保有する。無理をしない資金で不安のない資産運用を続ける。将来にむけて長い時間を持つ人ほど有利な資産運用を広めていきたいと思います。
金融業界や政策は統計や数値で経済を捉えますが、個人の人生においては高齢になってから下方のテールリスクが現実となることは悲劇です。その一人ひとりの人生の重さと相対しているのがアセットマネジメントというビジネスです。自分の生活にいかに投資を活かすかも、プロフェッショナルとして顧客とどう向き合うかも、この視点を持っていただければ幸いです。
モーニングスター・ジャパン
「投資信託事情(JITRI)」チーフ・エディター
島田知保(しまだ・ちほ)氏
国際基督教大学卒。食品会社、宇宙科学研究所(現JAXA-ISAS)、衆議院議員秘書を経て1995年より投資信託の専門誌「投資信託事情」(1959年発刊、2024年4月号にて休刊)発行人・編集長。2008年、事業譲渡によりイボットソン・アソシエイツ・ジャパンに移籍。2024年5月イボットソン会社分割によりモーニングスター・ジャパンにて活動開始。
プロ向け、一般向けを問わず、1990年代から一貫して長期・積み立て・分散投資やESG・社会的責任投資をテーマに活動。個人投資家の交流会「コツコツ投資家がコツコツ集まるタベ(東京)」共同幹事、「個人投資家が選ぶ!(旧投信ブロガーが選ぶ!)Fund of the Year」運営委員など、投資リテラシー向上のために個人投資家に向けた任意の活動も行っている。
2012年金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」
2017年同「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」
2016年より同「市場ワーキング・グループ」(いわゆる「老後2000万円問題」報告書)委員
2022年より同「顧客本位タスクフォース」メンバー
---
本連載は、投資信託専門誌『投資信託事情』(1958年創刊、2024年休刊)の発行人・編集長を務めた島田知保氏への取材をもとに構成しました。島田氏はモーニングスター・ジャパンに在籍、金融審議会の各ワーキング・グループへの参加など、制度設計にも深く関わってきました。現在はwebサイト『モーニングスター・ジャパン』コンテンツ編集長として活躍しています。
