新NISAの浸透とともに、投資家ならびに金融業界にとって資産形成における確かな指針が問われている。多様な情報があふれる今、その答えを見つけるヒントはどこにあるのか。「本当に良いファンドとは?」——日本初の投資信託専門誌『投資信託事情』の発行人として約30年にわたり業界の光と影を見つめ続けてきた島田知保氏に聞く短期連載の第5回は「投資の本質」をテーマにひも解いていく。
新NISAが一変させた投資環境
2014年に導入されたNISAは2024年に新NISAへ刷新された。その流れは投資信託を取り巻く環境を一変させた。
NISA買付額は2025年2月時点で早くも2027年末までの政府目標(56兆円)を前倒しで達成。島田氏はこの要因を積立投資の継続や1月にまとめて買う動きなど、成長投資枠での投信の一括購入が金額を押し上げている面があると分析する。一方で口座数目標に関しては現段階では未達だ。ただ詳しく見ると、積み立てを行う若年層の口座数は着実に増えている。一人ひとりの積立額は少額でも、その継続は大きな支えであり、成長の源泉として期待される。
近年、つみたて投資枠の伸びはやや鈍化している。関心層への普及が一巡したことや、昨今のインフレの影響からか積立を一時停止する層も出始めているという。少額でも継続することが重要である一方、今後の課題は投資に全く関心のない層へいかにアプローチするかだ。
「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」が映す、選ばれる投資信託の変遷
一方で投資を自らの意思で学び、発信する草の根のコミュニティは、この数十年の間に大きな成長を見せてきた。
島田氏が運営委員として参加してきた「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year」(旧:投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year)はその変化を映し出す鏡だ。
2007年の開始当時、投信ブログを運営する投票者はわずか20人。1位を獲得したのは「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」だった。積立投資で資産を作るという発信を地道に続けてきた同ファンドが評価された。
投票者数は2010年に59人、2020年には190人と着実に増えていった。2019年からは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称オルカン)が1位となり、7連覇を続けている。2024年からは「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year」に名称を変更し、ブロガー以外にも投票の門戸を開いている。
「オルカン」の存在感が目立つ中、業界へ向けては「新しいファンドを次々に作らなくても、預かり資産が増えていけば運用会社は安泰なはず。自分たちが本当に信念を持ち、長くお客さまに勧められる商品をきちんと作って売っていくべき」と島田氏はメッセージを送る。

