通帳に刻まれた「残高3,412円」の衝撃

同居から半年が経ったある日、決定的な事件が起きた。

母がリハビリに出かけている間、リビングのテーブルの上に、母の外出用のバッグが置き忘れてあった。中から覗いていたのは見慣れた銀行の通帳だった。

見てはいけない。そう思いながらも毎月の生活費を値切る母への不信感が勝り、私は震える手で通帳を開いてしまった。

印字されていた数字に思わず息が止まった。

毎月のように「ツウハン」「クレジット」の名目での引き落としが続き、年金のほとんどを使っていたのだ。そして、現在のページの一番下に刻まれていた最終残高は——。

「3,412円」

愕然とした。母には地方の家を売却したときの貯金があったはずだ。別の通帳を探すと、そちらの残高もほぼゼロ。すべての貯金は使い果たされていたのだった。

母は自分の物欲を満たすために、生活費を1円も払いたくないだけだった。私たちの念願のマイホームは、都合のいいタダ宿として利用されていたのだ。

そのことに気付いた瞬間、怒りと情けなさで血の気が引いていくのを感じた。ちょうどその時、ガチャリと玄関の鍵が開く音がした。母が帰ってきたのだ。

●信じていた実母の隠された真実を知り激昂する美咲。しかし、問い詰める娘に対して母が放ったのは反省の弁ではなく、信じられない言葉だった。家族の絆が完全に崩壊するなか、夫が突きつけた「ある最後通牒」とは——? 後編【念願のマイホームをタダ宿扱いの実母「親の面倒を見るのは子供の義務よ」怒り爆発の娘夫婦が下した最終決断は…】で詳説します。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。