資産形成・資産運用にまつわる実践的かつ効果的な情報提供を行うMUFG資産形成研究所。同研究所のウェブサイトに掲載された論文・レポートを再編集してお届けする(掲載元の執筆日:6月5日)。

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1.はじめに(要旨)

人的資本経営の重要性が高まる中、企業における従業員施策のあり方は、企業価値向上や人材戦略の観点から、福利厚生の充実に至るまで視点が多岐にわたる。なかでも従業員の資産形成に関しては、生活基盤の安定や将来不安の軽減、金融リテラシーの向上を通じて、エンゲージメントや自律的行動にも影響し得る重要なテーマである。もっとも、企業が関与し得る資産形成に関連する仕組みは、公的年金、退職給付制度、財形貯蓄、持株会、株式報酬、NISA・iDeCo活用支援など多岐にわたり、その目的や機能は一様ではない。したがって、各制度の性格を整理し、何をどこまで支援するのかを明確にすることが求められる。

本稿では、企業が関与し得る広義の資産形成制度を俯瞰し、それぞれの制度の特徴を整理した上で、企業がどのような目的・機能に着目して制度を導入・活用しているのかを考察する。あわせて、企業型確定拠出年金(以下、DC)について、DC創設以前からある退職給付制度の代替という位置付けにとどまらず、個人の資産形成を支える仕組みとして再評価する視点を提示する。DCは、積み立て投資の実践機会を提供するだけでなく、継続教育を通じて金融リテラシー向上を促し、従業員のライフプラン・マネープラン全体を支える基盤となり得る点に特徴がある。

以上を踏まえ、本稿の主張は次の二点に要約される。第一に、企業における従業員の資産形成は、退職給付制度のみならず、従業員による自律的資産形成を含めた制度ポートフォリオとして捉える必要があること。第二に、その中核には制度そのものの提供に加え、制度活用を支える情報・教育の提供が不可欠であり、DCはその両機能を併せ持つ制度として再評価に値することである。企業にとってDCは、財務・会計上の要請への対応手段であるだけでなく、従業員の資産形成の入り口としての機能と、資産形成に必要となる金融経済教育機能を併せ持つ社会インフラとして位置付け直すことができる。