なぜ機関投資家は、いま投資を増やすのか

個人投資家が不安を強める局面で、なぜ機関投資家は投資を増やすのか。鍵はクレジットサイクルにある。

クレジット市場は、拡大、過熱、調整、回復という局面を循環する。過熱局面では貸し手の競争が激しくなり、融資条件は借り手に有利な方向へ緩みやすい。逆に、調整局面では信用リスクへの警戒が高まり、スプレッドは拡大し、融資基準やコベナンツ(財務制限条項)は貸し手に有利な方向へ変化しやすい。つまり、いま新たに組成されるローンは、過熱局面に組成された既存ローンよりも、厚いスプレッドと厳しい契約条件を備えやすい。加えて、解約圧力や市場の不安によって流動性を必要とする売り手が現れれば、正常に返済されているローンを割安で取得できる可能性もある。

個人の退出が、機関投資家にとっての投資機会を生むことがある。これはプライベートクレジットに限った話ではない。市場が最も悲観的になる局面で、長期資金を持つ投資家が次の投資機会を探し始めるという構図は、過去の市場サイクルでも繰り返されてきた。

個人投資家が確認すべき3つの点

商品の良し悪しを一律に断ずるのが本稿の目的ではない。個人投資家にとって重要なのは、自分が保有している商品がどのような器なのかを確認することである。視点は大きく3つある。

第1に、自分が持っている商品の解約条件と上限を正確に理解しているか。四半期ごとに何%まで解約できるのか。上限に達したとき、自分の解約請求はどのように扱われるのか。「換金できる」という感覚と、契約上の現実は一致しているか。

第2に、基準価額がどのように算定されているか。非流動資産を抱える商品では、評価が市場価格より遅れて動くことがある。その遅れが、自分の判断にどう影響し得るかを意識しておく必要がある。

第3に、その商品を勧めてくれた人は、独立した相談先になり得るか。日本では、販売と助言が一体になっている構造が根強い。このこと自体が悪いわけではないが、いざというときに、販売者とは別の視点で保有商品を点検できる相手がいるかどうかは重要である。

同じ名前でも、同じ商品ではない

日本生命の巨額提携が示しているのは、プライベートクレジットという資産クラスそのものが否定されたわけではないということだ。一方で、個人向け商品の解約問題が示しているのは、非流動資産を個人投資家向けに提供する際には、商品設計が極めて重要になるということである。

同じ運用会社が関与し、同じ「プライベートクレジット」という言葉で語られていても、長期の保険資金を前提にした機関投資家向け運用と、一定の解約機会を与えた個人向け商品では、リスクの現れ方が異なる。投資家が問うべきは、その商品がどのような保有期間や換金条件を前提に設計されているのかという点である。