NISAのインデックス投資だけで「分散」は十分か?

冒頭の方にかぎらず、NISAでインデックス投信を積み立てている方のポートフォリオは、おそらくすべてが「証券取引所に上場している商品」で構成されているのではないかと思います。

全世界株型もS&P500連動型も、中身は上場企業の株式です。それ自体は良い商品であることに違いありません。ただ、ここでひとつ意識しておきたいことがあります。

上場商品の価格は、「市場参加者の売買」によって日々変動します。

企業の業績が変わらなくても、市場心理が悲観に振れれば値段は下がる。楽観に振れれば上がる。2024年8月、日銀の金融政策を巡る思惑等から日経平均株価はわずか3日間で約20%下落しました。しかし翌週にはほぼ元の水準に戻っています。「自分の資産が、自分の判断とは関係なく減っていく」—あの感覚を覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

上場商品は、いつでも売れるという大きなメリットがある代わりに、「市場参加者全員の感情」に毎日さらされている。これは構造上、避けられないトレードオフです。

では運用のプロは、このトレードオフにどう向き合っているのでしょうか。

GPIFもハーバードも注目する「オルタナティブ資産」とは

ややマニアックな話ではありますが、少しお付き合いください。

私たちの年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内外の株式と債券に25%ずつ配分する「4資産均等」の運用で知られています。運用資産は約293兆円(2025年12月末時点)。世界でも最大規模の機関投資家です。

そのGPIFが、2025年度からの第5期中期計画で、不動産・インフラ・プライベートエクイティといった「オルタナティブ資産」への投資を着実に拡大していく方針を打ち出しました。これまでオルタナティブに振り向けてきたのは約4.2兆円、全体のわずか1.6%(2025年3月末時点)。これを、上限を5%に設定し今後5年間で積み増していくとしています(出所:年金積立金管理運用独立行政法人「年金積立金管理運用独立行政法人中期計画」 )。

あのGPIFでさえ、上場株式と債券だけでは十分ではない—そう判断し始めたわけです。

海外ではこの動きはもっと先に進んでいます。世界最大の大学基金であるハーバード大学基金は、ポートフォリオの約8割をプライベートエクイティ、ヘッジファンド、不動産などのオルタナティブ資産で構成しており、2025年6月末時点で上場株式はわずか14%です(出所:Harvard Management Company「年次報告」)。

こうした機関投資家が「上場市場の外」に出ていく理由は、突き詰めるとシンプルです。

上場市場とは異なる「価格の決まり方」をする資産が欲しいから。

たとえば不動産ファンド。私たちが日々運用している不動産の収益は、入居者やテナントとの賃貸借契約に基づいて発生します。契約で定められた賃料は、株価のように毎日変動するものではありません。景気や物価の影響は受けますが、それは数年単位のゆっくりした動きです。評価額も不動産鑑定士による鑑定がベースで、「ミリ秒ごとの値動き」とは無縁の世界です。

この「価格の決まり方が根本的に違う」という性質が、株式と組み合わせたときに分散効果を生む。機関投資家が不動産やインフラに投資してきた最大の理由は、ここにあります。