スペックはリーダー格なのに…一蹴され続ける社会復帰の提案
正直な気持ちを言えば、才佳には働いてほしいと思っています。
足下のインフレで公共料金や生活費の負担が増えている上に、我が家は中学生と小学生の子どもがいて、この先10年間が教育費のピークになります。住宅ローンも25年以上残っていて、変動金利ローンなので今後の金利動向が気になるところです。
それに対して、世間は賃上げラッシュと言われますが、私の勤務先のような地方の中小企業はむしろ、新卒を確保するために中堅の賃金が抑えられているのが実情です。信金という業種自体が先行き不透明で、今の会社で定年を迎えられるのかも怪しいところです。
そんな中、家族の働き手が私1人というのは、どう考えてもリスクでしかありません。実際、結婚している同年輩の同僚の奥さんもほとんどが共働きで、専業主婦家庭はうちと、地元の大病院経営者の娘さんと結婚した先輩のところだけです。
そういう経済的な理由が大きいのは確かですが、才佳は学生時代から成績優秀で短期留学経験もあって英語も堪能、人望も厚いらしくPTAや女性同士の集まりでもリーダーシップを取っています。社会経験は大学卒業後に2年ほど中学校の英語教師をしていただけですが、数年前に私たちが住むマンションで理事会の役員をした際には融資部にいたことのある私でさえ気付かなかった会計帳簿上のミスを指摘したのでびっくりしました。
人手不足が叫ばれる昨今ですし、才佳のような人材こそ社会に出て自分の能力を発揮すべきだと思います。しかし、才佳には全くその気がないようです。下の陸が幼稚園に入園するタイミングで、自宅で英語教室を開いてはどうかと提案したら、「今の幸せを壊したくない」と瞬殺されました。
その後も、NPOの運営や起業など様々な側面から社会復帰を持ちかけてみましたが、色よい返事はもらえていません。私の住む県では公立学校で教員の大量定年退職による現場の教師不足が顕在化し、経験者に臨時的任用や非常勤講師の声がかかったようですが、才佳は「そんなの、受けるわけないじゃない」と鼻で笑っただけです。
