「PVなんて難しい言葉を使うんじゃねえ!」

「ええ。最初の打ち合わせで、古参社員の方から、いきなり罵倒されたんです。『PVなんて難しい言葉を使うんじゃねえ!』って……」

「それはひどいですね」的場は同情してみせた。

「私のような若造がやってきて、いきなり現場を仕切り出したので、その方は不愉快に思ったんだと思います。ITシステムの導入で、自分の立場が悪くなるという危機感もあったのでしょうし」

「なるほど。まあ、それはあり得る話ですね」的場はうなずいた。

「米倉さんや高原さんがそういう人じゃないのは分かっていたんです。ただ、かつて受けた暴言が頭をよぎってしまい、一発言い返さないとマズいと思って、ついキツい言い方をしてしまったんです。本当に申し訳なく思っております。あらためて場をいただけるなら、きちんと謝罪させていただきます」

そう言って、松沢は深々と頭をさげた。

その後、米倉も松沢の謝罪を受け入れ和解。会社HPのリニューアルプロジェクトはようやく動き出すことになった。

慣れてみると松沢は穏やかで接しやすい人物だった。雨降って地固まると言うが、初対面ではやり合った米倉は、むしろ松沢と仲良くなったようで、その後の作業は順調に進んだ。

――ITコンサルだから、きっと高飛車で付き合いにくい人だろう。そんな先入観を持っていたのは、こっちのほうだったかもしれないな……。

的場も裏では反省しきりだった。

 

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。