将来の豊かな生活に向けて、資産形成への関心がかつてないほど高まっています。一方で、資産形成に既に取り組んでいる層とまだ取り組んでいない層との間で、将来的な資産状況に差が生じかねないという課題も見えてきています。1万人規模のアンケートから「投資を始めた人」と「踏み切れない人」の境界線を紐解き、資産形成と向き合うための視座をお届けします。
※本稿は、大和アセットマネジメント 資産運用普及センターが2026年3月に発行した「資産形成白書2026」から〔第3章|NISA未稼働口座の状況 第3節 なぜNISA口座開設後、投資していないのか〕を転載・再編集したものです。
第3章|NISA未稼働口座の状況
第3節 なぜNISA口座開設後、投資していないのか
日本証券業協会のアンケート調査からみる未稼働の理由
投資に関する各種アンケートにおいて、投資をしない理由やNISAを利用しない理由などに関しては比較的調査結果も豊富と思われるが、NISA口座を開設後、なぜ投資していないのかとなると、極めてデータは限られてくる。
その点に関して直接的に理由を問うているのが、いずれも日本証券業協会が実施している「証券投資に関する全国調査」(2015年、2018年、2021年、2024年)と「国民のNISAの利用状況等に関するアンケート調査」(2022年)である。ただし、この2調査は回答の選択肢(いずれも複数回答可)がかなり異なるため、個別に見ていく。
まず「証券投資に関する全国調査」だが、そもそも投資意欲の存在自体が疑われるのが、「営業員からの勧誘がなかったため」5.5%(2024年調査、以下同様)と、「口座開設キャンペーンの景品が目的」8.0%である。それでも、複数回答可である点などを勘案すれば、極端に高い比率ということでもなかろう。
次に、2022年の調査であるため現在にはそぐわない部分もあるかもしれないが、「国民のNISAの利用状況等に関するアンケート調査」で非常に気になるのは、最も回答比率が高い「もともとNISA口座で買い付けをするつもりはなく、金融機関に薦められて開設した」の28.7%である。担当の営業員にお願いされたので仕方なくといったことだろうか。もし、この要因が現在のNISA未稼働口座比率に直結しているのであれば、20%程度の未稼働口座の内訳としての30%程度は稼働させるのが非常に難しいかもしれない。
一方、「証券投資に関する全国調査」に戻ると、「市場動向から投資時期を見極めている」19.0%や「投資する資金が確保できなかったため」18.2%などの比率も高い。こうした回答が40代以下で多いのは(サンプル数が少ないため信頼性が高いとはいえないが)、長期・積立・分散などの投資のイロハが、まだ十分には浸透していない可能性を示しているのではないだろうか。
さらに、「証券投資に関する全国調査」で最も回答比率が高いのが「投資の方法が良く分からないため」の28.8%である点は、金融機関など投資を啓蒙する側に課題があることを示していよう。この選択肢には、投資はしたいが方法が分からない層と、投資への関心がそれほど高くない層が入り交じっている可能性もあるため、安易な結論づけは控えるべきだろうが、投資をしたい層にそのための情報が十分届いていないとすれば、情報提供の方法を再検討する必要があろう。
以上、NISAの未稼働口座について分析してきたが、それら口座保有者への情報提供方法や頻度を再考することで、未稼働口座比率を1ケタ台に低下させることは可能と考えたい。
