「さすが長年トップ営業マンだっただけありますね」

マネージャーの村井は続ける。

「竹田という人は、かつて清掃員のバイトをしていたんだそうです。その時に年配の社員から掃除の仕方が悪いといじめられたり、清掃の仕事先で馬鹿にされたりしたそうです。それ以来、掃除の業者の人に対してゆがんだ見方を身につけてしまったらしく、からかったり、嫌がらせを繰り返していたんだとか」

「はあ……」

そう言われても秀和は納得がいかなかったが、マネージャーの村井がなだめた。

「まあまあ、納得がいかないのも当然でしょう。ただこれ以降は嫌がらせされることもないと思います。希望されるなら別のマンションの担当と代わっていただいても」

秀和は少し考えてから首を振った。

「いや、同じマンションで大丈夫です」

マネージャーの村井はけげんな顔をした。

「嫌がらせされたマンションなのに、本当に大丈夫ですか?」

「はい」

秀和は微笑んだ。低層のマンションで仕事が楽だったので、嫌がらせの件を除けば最高の職場だったからだ。

「それにしても、有村さんの対応は素晴らしかったですよ。あれだけ嫌がらせされても、やり返したりせず、じっと我慢されていたのは本当にすごい。冷静に対応してくださったから、解決できたんです。さすが長年トップ営業マンだっただけありますね」

「いえ、それほどでも……」

秀和は口ではそう謙遜したものの、マネージャーからおだてられると気分が良かった。

「その素晴らしい対応スキルを、ぜひうちの会社の営業にも教えてもらえませんか。別途講師料をお支払いしますから」

「もちろん、やります!」秀和の表情がさらに輝いた。

 

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。