<前編のあらすじ>
66歳になる有村秀和は、営業として長年務めた会社を退職したあと、マンション管理人として再就職していた。
マンション管理の仕事を選んだ理由は、軽作業が中心で、自分にもできそうだと思ったからだったが、実際にやってみると気苦労も多く、簡単な仕事ではなかった。
その上、住人とのトラブルも発生。秀和が担当したマンションで、ゴミ捨て場の掃除をしていると、スーツを着た住人がやってきて、秀和に向かって侮辱的な言葉を投げつけるという事件が起こった。
気分を害した秀和は所属するマンション管理会社に報告したが、住人からの嫌がらせはその後も続いていた……。
●前編:【「清掃員の分際で、生意気なんだよ」66歳マンション管理人がショックを受けた「若い男性住人」の罵声】
その後も嫌がらせが続いた
その日以降、マンションのゴミ捨て場には、有村秀和への当てつけなのか、分別されていないゴミ袋があふれるようになった。
生ゴミと同じ袋に、ペットボトルを捨ててあるなどはまだ可愛いほうだった。
時には割れたグラスや、針といった危険物が混じっていることさえあった。
こんなこともあろうかと、秀和は前もって軍手を二重にしてはめていたので、手を怪我することはなかった。
――だからといって、許されることじゃないぞ……。
秀和は腹の虫が収まらなかった。まかり間違えば、両手に怪我を負っていたかもしれない。こんな悪質な嫌がらせを放っておけないと思っていた。
犯人は例のスーツの若い男しかあり得なかったが、証拠はなかった。ゴミをより分けてくわしく調べたものの、持ち主を特定できるような情報は見つからなかった。
マンションの住人から嫌がらせを受けていることを、秀和は、自分が所属するマンション管理会社に報告していた。
ただ秀和への嫌がらせとは断定できないため、管理会社としても動けないという話だった。
「せめて、そのスーツの男が何号室の住人かくらい分かるなら、もっと対応できるんだが……」
有村秀和がそう独り言をつぶやきながら、マンションの階段を掃除していた、その時だった。
