エリオットはどうやって価格を動かしたか

エリオットは最終的に株式を7.14%まで買い増したが(2026年2月5日時点)、その過程で2026年1月18日付で株主全員への公開書簡を出している。そこには「今の提示価格は会社の本当の価値を大幅に下回っている」という主張が具体的な数字とともに記されていた。

エリオットが計算した豊田自動織機の「純資産価値(NAV)」は1株あたり2万6,134円※。当時の改定後TOB価格1万8,800円と比べると、約40%も高い水準だ。

なぜこれほど差が開くのか。TOB発表(2025年6月)後の約7カ月で、豊田自動織機が保有するトヨタ自動車などの株式が大幅に値上がりし、保有資産の価値が膨らんでいたからだ。エリオットではこの期間だけで1株あたり約5,400円以上、価値が上昇していると計算している。政策保有株という論理を排し、株主価値の最大化をストレートに求めた格好だ。

さらにエリオットは、本業(産業車両事業)の評価が低すぎるとも指摘した。EBITDAという利益指標と比べた買収倍率が1倍を下回っているというのだ。これは事業会社としては異例の評価で、エリオットのロジックに従えば、買収倍率が1倍を下回る現状は実質的に本業を極めて低廉に取得できる状態を意味しており、市場の評価と実力値の乖離(かいり)を突くものとなった。

加えてエリオットは以下のような趣旨を宣言している。もしこのTOBに応じなければ、株主のみなさんは上場を維持したまま、2028年までに今の提示価格の2倍を超える価値を得られる可能性がある、と。

この訴えは強いインパクトを与えたようだ。エリオットに同調する株主が増えれば、TOBは「成立に必要な応募数」に届かず不成立になる。買収側にとって最も避けたいシナリオだ。

数字で価格の乖離を示す、そして、応募しない選択肢に現実味を与える——この2段構えの戦術が、価格引き上げを実現した本質だ。

※出所:エリオット・マネジメント「株式会社豊田自動織機の株主の皆様へ」(2026年1月18日付)