なぜ最初の価格は市場より「安かった」のか
TOBとは本来、買い手が「この会社はもっと価値がある」と市場に示す行為だ。だから通常は、株式市場の価格より高い値段(プレミアム)を上乗せして提示する。
ところが今回の最初の提示価格は、市場価格を約11%も下回っていた。これを「逆プレミアム」と呼ぶ。なぜそうなったのか。
答えは豊田自動織機の特殊な財務構造にある。豊田自動織機はトヨタ自動車の株式を大量に保有している。2025年3月期末時点で約9%※、時価にして3兆円超。これは当時の豊田自動織機自身の時価総額の8割近くに相当する水準だった。つまり市場は豊田自動織機の株価を「トヨタ株の塊」として値付けしており、本業(フォークリフトや産業機械の製造・販売)の価値はほとんど株価に反映されていなかったとの見方が広まっていた。
トヨタ陣営は、市場価格に含まれる一時的な期待値や、売却制限のある保有株の換金性の低さを考慮し、より保守的な価格設定での成立を目指したのかもしれない。だがこの読みはエリオットによって崩されることになる。
※出所:トヨタ自動車決算短信(2025年3月期)
