現代社会は石油からさまざまな製品を作っているため、石油危機が起こると、エネルギーだけでなく経済全体に影響が及びます。
特に「ナフサ不足」を懸念する声も多く、供給不足を政府が否定する事態となっています。
また、中東からの輸入に頼っている「ヘリウム」の不足も、経済に甚大な影響を及ぼすとされています。
迫りくる石油危機に、個人投資家はどう対応すればよいでしょうか。つばめ投資顧問代表の栫井駿介さんが解説します。
※本記事は4/7につばめ投資顧問にて公開された「【半導体株】ナフサ・ヘリウム不足が招くリスクと今後の見通し―信越化学・SUMCO・東京応化は?」を編集の上、栫井氏による特別コメントを付して掲載しております。
「平時の前提」自体が揺らいでいる【特別コメント】
平時の前提で見れば、足元で大きく売られた半導体材料株には割安感が出てくるかもしれません。ですが今回のような地政学リスクでは、その「平時の前提」自体が揺らいでいる点を見落としてはならないと思います。
株価が下がったから買い場だと単純に考えるのではなく、サプライチェーンの混乱が中長期化した場合に、利益水準や需給、さらには市場が企業に与える評価そのものがどう変わるかまで見ておく必要があります。要は、楽観シナリオだけでなく、ネガティブシナリオも織り込んで投資判断すべきだという点です。
たしかに政府が説明するように、在庫や川中在庫が一定程度機能し、直ちに最悪の事態へ進まない可能性はあります。しかしそれは安心材料というより、「時間を稼げる可能性がある」という程度に受け止めるのが自然でしょう。問題は、供給不安が短期で収まるのか、それとも長引いて企業収益や生産体制にじわじわ効いてくるのかです。後者であれば、正常時の収益力を基準にした割安判断は、そのままでは通用しなくなります。
加えて今の相場環境では、一度情勢が落ち着いても、それで不確実性が消えるわけではありません。世界情勢は米国大統領の一挙手一投足で空気が変わり、イラン情勢も不安定化が続きそうな状況です。停戦期待や関係改善の報道だけで、リスクが取り除かれたと判断するのは危ういでしょう。だからこそ投資家は、悲観シナリオを念頭に置く必要があります。
特に打撃を受けやすいのは、原料やエネルギーへの依存度が高く、代替調達や価格転嫁が簡単ではない川上の素材・化学セクターです。半導体材料、産業ガス、非鉄金属、電力多消費型の素材産業は、見た目以上に利益の下振れ余地を抱えているかもしれません。信越化学やSUMCO、東京応化のように技術力や顧客基盤に優れた企業でも、ネガティブシナリオが長引けば、株価の評価軸も厳しくなる可能性はあります。「素晴らしい企業」であることと、「今すぐ良い投資対象」であることは別物であることを覚えておきましょう。
