いよいよ農事始め本番

農事始めに向けて恵理は普段よりも早く起きて仏壇に手を合わせた。

「今年も始まります。あなた、お義父さん、天国から見守っていてください」

それだけ伝えて、恵理は台所に直行し振る舞う料理の準備を始めた。

10時になったあたりで瑠璃子たち夫婦がやってきてくれた。

「お義姉さん、お久しぶりです」

玄関で瑠璃子は笑顔で頭を下げてくれた。

「いつもありがとうね。とりあえず中に入って。お茶を出すから」

「それよりも準備をしちゃいましょう。お母さんは何もできないんだし」

瑠璃子の提案をありがたく受け入れて、恵理たちは3人で農家の人たちを迎え入れる準備を始めた。

恵理は事前に縁側で干しておいた座布団を客間に持っていき、人数分を並べた。瑠璃子たちは長机を2人で出してくれた。それから恵理は台所に戻り、大鍋で作っていたお事汁を仕上げに取りかかった。

味噌とゴボウの匂いがゆっくりと広がってきたころに農家の人たちが次々にやってきた。玄関のたたきはあっという間に靴で埋まり、さっきまで静かだった客間から人の声が聞こえてくるようになった。恵理は1人ひとりをきちんと迎え入れて客間に通し、それが終わると台所に戻るという行動を繰り返した。参加者が揃ったところで志乃を呼び、志乃は腰をかばいながら全員に軽く挨拶をして上座に座った。料理とお酒が並び、最後に恵理がお椀に入ったお事汁を全員の前に置いていった。すべての料理が出そろったところで志乃が乾杯の音頭を取り、宴会が始まった。