新自由主義から「経済産業政策の新機軸」へ
第二の戦術は、グローバルな経済政策の潮流転換を活かした「官民連携の成長投資」です。これまでのグローバリゼーションでは、コストの高い日本ではなく世界で最もコストが低い場所で生産すれば効率化できるとされてきました。
しかし大きな問題が生じました。民間に任せ、競争が激しくなるほど、企業は短期的な収益拡大に集中せざるを得なくなり、コスト部門である賃金や投資が不足しました。また、生産拠点や農業生産が外国に移転した地域は疲弊しましたが、政府の関与を小さくするという思想のもとでは支援されず、地方の衰退が進み、政治の不安定化につながりました。
さらに米中対立とウクライナ戦争により、サプライチェーンの広域化という効率化の追求が、かえってサプライチェーンを脆弱にすることが明らかになりました。
こうしてグローバルな経済政策の潮流が、新自由主義から「経済産業政策の新基軸」へと急速に転換しています。多様化する中長期の社会経済的課題(経済安全保障、防衛・防災、少子化対策、人への投資、20〜30年先を見据えたテクノロジー・基礎科学への投資など)は、短期目線の民間だけに委ねると投資が不足してしまいます。
プライマリーバランス制約からの脱却
官民連携の成長投資を推進する上で大きな障害となるのが、プライマリーバランスの黒字化です。これは政府の役割を小さくするという考え方と親和性があり、「将来の所得や成長を産む投資であっても、社会や経済の課題を解決する投資であっても、税収の範囲内で」という制約を課します。
グローバルな官民連携の成長投資の競争時代に、そのような制約を課しておくわけにはいきません。そこで今年6月の骨太の方針では、これまでの単年度でのプライマリーバランス黒字化目標という新自由主義的な考え方から、より成長投資を実現できる柔軟な財政の考え方への転換が図られることになります。
責任ある積極財政の意味
高市政権が掲げる「責任ある積極財政」とは、財政規律を完全に無視してお金を使い続けるという話ではありません。経済を再生させ、その先で財政健全化まで成し遂げることを意味します。
政府の債務を評価する際に「純」の概念が重要です。日本政府は膨大な金融資産を保有しており、負債の側だけを見ると実際より大きく見えてしまいます。しかし、純負債はGDP比で75%程度まで改善しており、米国の105%よりも小さい水準です。
経済を成長させることによってこの指標をさらに改善し、日本経済が再生した暁には純債務をGDP比50%まで持っていくことができます。50%はかつて日本がトリプルAの格付けを得ていた水準であり、経済再生の先に財政健全化まで達成するのが責任ある積極財政の考え方なのです。
