キャリア研修と組み合わせた実践的な取り組み事例
実践事例を紹介します。A社では30歳・40歳・50歳の節目で行うキャリア研修にマネー研修を組み込んでいます。キャリア研修ではワークとキャリアコンサルティング面談をセットで行い、社員が強みや思考を言語化して具体的なキャリア目標を描けるよう支援しています。マネー研修も知識のインプットにとどまらず、自社の退職給付・資産形成制度の活用を組み込みました。さらに、ライフプランコンサルティングを活用して具体的な行動まで踏み込んだプログラムにした結果、理解度・相談ニーズともに高水準となりました。キャリア研修にマネー研修を組み込む形式であれば、金融リテラシーに関わらず全社員が参加します。相応のリテラシーを持つ受講者からも自社制度の詳細案内にポジティブな声が寄せられており、自社への満足度やエンゲージメント向上に寄与した事例といえます。
当社も年代別研修にFWBのセミナーを組み入れています。40代向けのキャリアオーナーシップ研修では、事前課題やグループワークで自分の強みや思考を見つめ直しながら、「経済資本」を重要な資本として位置づけて福利厚生の全体像を説明しています。事前課題にはミライ研開発の「資産のミライ健康診断(ミライ健診)」を活用しています。全国1万人のデータと照合して家計の立ち位置を可視化するこのツールにより、受講者は自社の同年代社員との比較で自身の状況を把握できます。資産形成の進捗が十分でない受講者ほど見直しの意欲が生まれることを期待しています。
昨今の賃上げムードの中、給与水準の引き上げは重要な経営アジェンダです。しかし、それだけで従業員の満足度が高まるほど単純ではありません。退職給付制度の認知促進と金融教育によるリテラシー向上が不可欠で、4つのプロセスを軸に支援対象を明確にしながら効果的にリーチする手段を考えることが求められます。特にキャリア研修と金融教育の掛け合わせはリテラシーの低い層にも届く実践的アプローチです。各社の事情も踏まえながら人的資本経営におけるFWBの位置づけをぜひご検討ください。
ウェルビーイング学会ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会 副座長
清永 遼太郎氏
