「俺のほうが多くなるんだが、いいのか?」

本来兄弟姉妹は等分での遺産分割が原則なのでこういったケースは現代では割と珍しい。驚いた利弥は「それだと俺の方が多くなるんだが、いいのか?」と確認する。
利弥が驚くのも無理はない。預貯金3000万円に対して金融商品は2000万円。その差はなんと1000万円もある。

加えて金融商品には価格変動リスクがある。読者諸兄におかれてもリーマンショックやコロナショックなどによって損失をこうむり痛い思いをした方が少なからずおられるのではないだろうか。

安定志向の利弥はできれば不安定な金融資産は避けたいと思っていた。美矢の申し出を受ければ、安全な預貯金を全額相続できるため、願ってもなかった。本来受け取れる金額よりも多めにに相続できるので、なおさら喜ばしい。

一方の美矢は「投資は嫌いじゃないし、リスクはあるけどお金について学ぶのは好きだから!」とリスクも理解した上での申し出のようだった。

私はその様子を見ながら「お二方とも納得されているようなので……」と、遺産分割協議書を作成していった。

このように終始和やかな雰囲気で終わった今回の遺産分割。それがこの後、荒れに荒れようとはこの時はまだ思ってもいなかった。

●数年後、兄と妹の状況は一変し、骨肉相食むバトルへ発展……。後編【「警察に介入してもらうことになりますが」43歳兄の嫌がらせに行政書士もブチ切れ…株の急騰で大儲けした40歳妹の災難】では、遺産分割協議書の性質や効力、相続にあたっての注意点について解説します。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。