26年度予算で計上される「プロアクティブ」投資

となると、片山大臣がダボスで強調した「プロアクティブ(先見的な)投資」が、実際にどのような分野に振り向けられているのか、またそれに対して日銀や市場がどう動いているのかが重要になってくる。

実際、令和8年度予算案では、単なる消費的支出ではなく、日本の「稼ぐ力」を強化するための分野に重点配分されている。まずは戦略投資(AI・半導体)分野である。こちらでは、熊本のTSMC第3工場や、国産最先端半導体(ラピダス)への継続的支援に加え、AIインフラの整備に兆円規模の「経済安全保障枠」を確保している。また、防衛・エネルギー分野として、防衛力の抜本的強化と、脱炭素(グリーントランスフォーメーション:GX)への投資をセットで進め、エネルギー自給率向上による経常収支の改善を狙っている。さらに、供給力強化の分野として、人手不足を解消するための省人化投資(ロボティクス)への補助金が拡充されている。

重要となる「エクスパンショナリー(拡張的)ではない」ことの証明

一方、市場では、政府が「いくら使うか」よりも「どうやって帳尻を合わせるか」の方に注目が集まろう。しかし、この点については、先述の通り新規国債発行額の抑制で説明することができる。というのも、26年度当初予算ベースで30兆円を下回る水準まで抑え、当初予算ベースでPB黒字化したことで、「高市政権=無限に借金を増やす」という懸念を数値で否定することができよう。この背景には、名目成長率の上昇に伴う税収の上振れ分を、追加のバラマキではなく、借金の抑制(公債依存度の低下)に充てているということがある。こうした点を、もっと投資家に注目してもらう必要があろう。

こうした意味では、やはり日銀・市場との対話がカギを握る。特に、財政が拡張的すぎるとインフレが加速し、日銀が急激な利上げを迫られることになる。このため、財政を出しすぎず締めすぎない管理をすることで、日銀の利上げペースを緩やかに保ち、経済へのショックを最小限にとどめることが求められる。このためにも、日銀との協調が重要となろう。

また、日本国債の主要な買い手であるメガバンクや生命保険会社に対し、国債発行計画の透明性を高め、金利の急騰(国債暴落)を防ぐための「対話」も重視することで、機関投資家へ配慮することも重要といえる。

以上をまとめると、「責任ある積極財政」とは、世界標準的な「積極財政」の理論を取り入れつつも、現実的な規律(財政の持続可能性)も考慮したものといえる。「成長のために必要な資金は出すが、市場を壊すような無謀な借金はしない」という、非常にバランスを意識した舵取りを志向したものといえよう。