はじめに
債券・為替市場を中心に、高市政権の進める「責任ある積極財政」を「野放図なバラマキ(放漫財政)」と警戒する向きがある。
これを受けて、片山財務大臣は先月のダボス会議で、高市政権の政策がプロアクティブ(先見性のある)であってエクスパンショナリー(拡張的)ではない、赤字国債に頼らずできることしかしないとした。そして、これからも市場安定への対応を行うことを約束し、信認を取り戻すためには様々な機関投資家や日銀とも話す、と述べた。
この発言は、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」の定義を、国際社会やマーケットに向けて再発信し、信頼を繋ぎ止めるための極めて戦略的なものといえる。
そこで本稿では、責任ある積極財政の各ポイントの背景と意図を解説する。
「プロアクティブ」であり「エクスパンショナリー」ではない
そもそもこの表現は、海外投資家が最も警戒する「野放図なバラマキ(放漫財政)」という懸念を払拭するためのものである。
具体的に、プロアクティブ(Proactive)とは、先見的・戦略的を意味するものであり、責任ある積極財政の中では、AI・半導体、造船、宇宙、海洋をはじめとした17の成長・危機管理分野への投資や、供給力の強化に「先手を打って」資金を投じることを指す。これは「将来の税収増につながる投資」という意味を含んでいる。
一方、エクスパンショナリー(Expansionary)とは拡張的を意味し、単に景気を下支えするために支出規模を膨らませるだけの政策ではない、という否定である。これは、「規模(量)の追求」から「投資先(質)の追求」へシフトしたことを強調し、財政規律を重視する国際社会に配慮した表現と言える。そして実際に、26年度当初予算ベースの歳出額(GDP比)は過去30年間では12番目の高さにとどまっている(図表1)。