高市政権の国債増発で財政破綻の懸念はほぼない
――日本の金利動向はどうだったか。特に高市政権がもたらした影響は?
高市政権の積極財政が金利に与えた影響は2つに分けて考えている。
1つ目は、成長期待やインフレ率の(適度な)上昇を想定したもので、良い金利上昇と言える。10年以下の金利はYCC後も続く日銀買入れの影響で低く抑え込まれていた(ストック効果)が、前倒しでこれが消失した面もある。10年金利は2%を越え、ようやく適正なレンジに入ってきたのではないか。銀行勢をはじめとした様々な投資家の買いが見込まれる。
2つ目は、財政の破綻やインフレの加速、通貨価値の毀損可能性など負の面であるが、それらのリスクは過大評価されている。特に財政の破綻に関しては、財務省が意見書で「先進国の自国建て国債はデフォルトしない」と表明している通り、その可能性は「ほぼ」無いと見るべきである(より詳しくは拙著をご覧ください)。
「ほぼ」というのは、政府が自らデフォルトを宣言し支払いを滞らせる可能性はゼロではないからである。片山財務相をはじめ政府関係者自らクレジットデフォルトスワップ(CDS)を参照して、日本の破綻の確率はまだ低いとの主張が目立つが、本末転倒であるだけでなく、無用なリスクを想起させ有害である。(日本国債を参照する)CDS市場は規模が極めて小さく、日本の金融機関、投資家の参加も極めて困難であり、市場参加者が話題にすることはほとんど無い。
――2026年の金利動向の見通しは?
米金利に関しては、ここからの利下げが1~3回(0.25%-0.75%)になりそうである。底堅い成長が続く一方でインフレは過熱しないだろう。一方、欧州は中立金利とみなされる2%までの利下げが終了し、次の動きは利上げになるという見方が強まってきた。
いずれにせよ、2026年中は欧米の短期金利は中立金利近辺で収まるのがメインシナリオで、大きな波乱は予想していない。FRB新議長に関しても、大きな攪乱要因にはならないと見ている。長期金利に関しては、発行年限短期化によるリスクプレミアムの縮小を見込んでいる。この点は、発行増によるリスクプレミアムの拡大を予測する多数派とは逆の考えである。
一方、日本は波乱含みと見ている。まずは、円安の進行を止められるのか。止められない場合、インフレ目標2%に対する中立金利である1.5-2.0%への利上げを早期に迫られるだろう。2026年はインフレが一時的に2%以下に低下すると予測されているが、首尾よく下がらない場合には、引締め的なレベルにまで政策金利を引き上げざるを得ない。ベッセント財務長官が言うようにすでにビハインドザカーブ(対処が遅れている)になっているのかもしれない。
超長期債に関しては、外国勢を中心とした投機的なポジションに支えられ脆弱である。4月からの発行量減額が決定したことは安心材料であるが、外国勢が損切りを迫られた場合や生保契約者からの解約が増加した場合など、金利が急上昇するリスクは依然否定できない。
トラスショック※ならぬ高市ショックが起きる可能性がある。日本は経常黒字なのでイギリスのようなことは起きないといった論調が主流であるが、最大の要因は超長期債の需給である。トラスショックの際は年金勢のレバレッジ解消によって売りが売りを呼ぶ展開になった。日本でも、金利上昇がトリガーになって生保契約が解約され、債券を売らざるをえなくなる構造が内包されている。
※2022年9月に英国のリズ・トラス首相(当時)が発表した財源不明の大規模減税をきっかけに、英国金融市場が「ポンド安・国債金利高・株安」のトリプル安に陥った
ただし、このような局面があっても国の資金調達に問題が生じることはなく、株式市場や実体経済への影響は限定的であろう。2025年4月にはミニトラスショック的に金利が急上昇したが、その際も同様の反応であった。
