2025年の金融市場は波乱含みの展開となった。世界経済は米国第2次トランプ政権による保護主義的な通商政策が関税ショックを引き起こし世界を翻弄。国内では日銀が追加利上げを実施し、金融正常化を推進。春闘では2年連続5%台という高い賃上げ率を達成したものの継続的な物価高は消費者生活に色濃く影を落とし続けている。10月には初の女性総理となる高市政権が誕生。株式市場は活況を呈する一方、インフレと金利上昇圧力は継続している。世界株はAI投資に牽引され、国内株は日経平均が史上初の5万円台を突破し過去最高を更新。新NISA投資家にも大きな影響を与えた。2025年の流れを受け、投資家は2026年にどう挑むべきか。世界経済、金融市場の見通しについて楽天証券経済研究所の所長兼チーフエコノミスト、愛宕伸康氏に聞いた。
リセッション懸念から一転した米国経済が象徴した2025年の世界経済
――2025年を振り返って、世界経済および金融市場の主な動き、流れは?
2025年前半の世界経済は崩れそうで崩れない展開となった。それを象徴したのが米国経済。もともとソフトランディングをベースシナリオとしていたが、2025年1~3月期の3年振りとなるマイナス成長や4月のトランプ関税ショック※を受けて、年後半の景気後退入りが懸念された。
しかし、新型コロナ禍での現金給付による過剰貯蓄が残存する中、2024年後半以降の米連邦準備理事会(FRB)の利下げ効果もあって株価は上昇基調を回復。年後半にかけて、株価上昇による個人金融資産の拡大が4~6月期以降の高成長につながり、それがさらなる株価上昇につながるというアクセルの効いた展開となった。
※(注)トランプ関税ショック…米トランプ大統領が2025年4月2日に発表した相互関税をきっかけで各国株価が暴落したショック。発表された相互関税はすべての国・地域に対し10%の「基本税率」をかけたうえで、各国・地域が課している税率(「為替操作や貿易障壁を含む」)をもとに、それと同水準まで関税率を引き上げるための「上乗せ税率」を設定するというもの。トランプ大統領が「割引した相互関税」と言った上乗せ税率は、日本24%、欧州連合(EU)20%、中国34%、インド26%、韓国25%など。発表後の3日間(3日~7日)でニューヨークダウ工業株30種平均は4,259.7ドル(10.1%)、日経平均株価は4,589円(12.8%)の急落となった。
