常識変える「ナノインプリント」 露光に代わる半導体の新技術が起動

最後に期待の新製品を押さえましょう。キヤノンはナノインプリントによる半導体製造装置の製品化に成功し、量産化へと歩みを進めています。

半導体デバイスにおける回路形成は、主に露光技術を用います。原版に描かれた回路を、写真のように光でウェハーに転写して形成する技術です。特に緻密な設計が求められる先端半導体は、波長が極めて短い極端紫外線(EUV)が用いられます。EUV露光装置はオランダのASMLが独占しており、市場シェアのほとんどを同社が握ります。

【半導体製造における露光装置のシェア(21年)】
・蘭ASML:92.8%
・キヤノン:4.6%
・ニコン:2.6%
・(参考)露光装置の市場規模:1兆8084億円

出所:経済産業省 半導体・デジタル産業戦略

一方、ナノインプリントは「はんこ」のような技術です。光を用いず、原版をウェハー上に押し付けて回路を形成します。先端半導体に求められるナノミリメートル単位の回路形成が可能で、EUVに代わる新技術として注目されています。

キヤノンは04年からナノインプリントの開発に着手し、23年に製品化に成功しました。現在は試験段階までステップを進めており、24年に評価機が米国の半導体コンソーシアムに出荷されたほか、25年4~6月にも評価機が半導体メーカーに出荷されています。

EUV露光装置は1台200億円以上ともいわれ、電力消費量も膨大です。ナノインプリント装置はEUV露光装置より低額で、かつ消費電力は10分の1になるとみられています。先端半導体向けの露光装置は市場規模が大きく、EUVからナノインプリントへの置き換えが進めばキヤノンには大きなインパクトを与えると考えられます。

なお、EUV側も光の反射制御でコストを抑制する技術が開発されつつあります。キヤノンはASMLの牙城を崩せるのでしょうか。半導体メーカーの反応が待たれます。