焦点は成長戦略に プリンターは消費者向け強化、メディカルは海外見直し
今期(25年12月期)は苦戦しているものの、決算は第3四半期まで公表が済んでおり、株価には織り込みが進んでいるものと考えられます。今後は成長戦略に焦点が向かうでしょう。
キヤノンは25年3月に説明会を開催し、26年以降の経営方針を解説しました。ポイントとなる主力の「プリンティング」と、前期に大きな赤字となった「メディカル」の戦略を押さえておきましょう。
【セグメント情報(24年12月期)】
※FPD…フラット・パネル・ディスプレイ
※メディカルの営業利益は減損損失1651億円を含む
まずはプリンティングです。先述のとおり今期(25年12月期)は苦戦していますが、同事業は構造改革の効果が顕著に現れており、利益は20年12月期から大幅に回復しました。オフィス向け複合機や商業印刷機で製品の標準化改革を進めたところ、ラインナップ全体でブランド力が向上したほか、開発コストの低減が発現し、順調な成長につながっています。
26年以降は消費者向けのインクジェットプリンターを強化する方針です。オフィス向けや商業向けは業界首位ですが、消費者向けはシェア拡大の余地が残ります。そこで、オフィス向けや商業向けで成功した標準化改革を消費者向けにも拡張し、開発力を高めることでシェアを伸ばします。また、事業全体で高付加価値製品の開発を加速するほか、生成AIやリモート操作といったクラウドを活用した販売の高能率化にも取り組み、事業の成長を図ります。
一方、メディカルは海外事業および組織体制の見直しを中心に進めます。中国は汚職の摘発を強化する「反腐敗運動」が医療機関にも向かっており、医療機器への投資抑制から販売が苦戦している状況です。収益の確保に向け、海外事業のコストの適正化に取り組みます。また、主要市場の米国は販売網を再編し、画像診断領域での成長を目指します。さらに、16年に買収した旧・東芝メディカルシステムズは26年1月を目途に統合し、開発や本社部門を集約させ収益性を改善させます。
今期は中期経営計画の最終年度にあたり、より具体的な計画は本決算で明かされることが予想されます。投資家の期待を再び集められるような、より踏み込んだ内容になるか注目です。本決算は、例年1月下旬に公表されています。

