投資家である前に、“哲学者”だった

投資哲学と同じくらい、私が心を惹かれてきたのが、バフェット氏の人生哲学です。
その中でも、特に胸に刺さった言葉があります。

「金と幸せは別物だ」

世界有数の富豪であるからこそ、この言葉の重みは計り知れません。

私は、お金は人を幸せにするためにある”手段”だと考えています。必要な分があれば十分なのです。しかし現代社会では、「お金を稼ぐことこそ正義」という風潮が強く、お金と幸せをごちゃまぜにしてしまいがちです。

バフェット氏は、お金を持つことと幸せになることが別の話であると、自らの人生で証明してくれました。

投資家でありながら、同時に“哲学者”でもあった。そこに私は強い魅力を感じています。

「ゆっくり金持ちになればいい」という真理

バフェットがAmazonの創業者であるジェフ・ベゾスとの対談で語った次の言葉も、私の人生観を大きく変えました。

「誰もゆっくり金持ちになりたいとは思わない」

長期を見据えれば正しい道だと思ったとしても、それに時間がかかるなら、目先の利益を求めてしまうのが人間です。しかし、実際には短期的な利益を求めることはトラブルも呼び込みやすく、結局は長期的に価値を生む活動を続けることこそが、本質的な成功につながります。

これは投資に限らず、ビジネスにも人生にも当てはまります。Amazonはまさにその考え方で世界でも有数の企業になりました。そして私自身も、会社経営において短期的な利益を追わず、「長期的な価値を生むかどうか」を基準に判断するようになりました。その結果、感情に振り回されることが減り、人間関係も穏やかになり、人生そのものが豊かになったと感じています。

長期思考は、心の安定と幸福に直結する。バフェット氏は、その真理を教えてくれました。

バフェット氏は“100発100中”ではない

多くの個人投資家が誤解しやすいのは、「バフェットは常勝の天才」というイメージです。しかし実際には、バフェット氏自身もこう述べています。

「バークシャーの成功は5年に一度の大成功が支えている」

コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス、アップル、そして日本の商社株。
こうした大成功がとてもまぶしく見えるため、あたかも全勝しているように見えてしまいますが、実際は違います。むしろ、「勝率」だけを計算すると約6割ともいわれ、驚くほど平凡なものです。

つまり、バフェット氏が偉大なのは“天才だから”ではなく、哲学を守り、忍耐し、失敗を避け、時折訪れる大成功を逃さない姿勢を貫き続けたことにあります。

これは個人投資家がぜひ理解すべき本質です。投資は100発100中を目指すものではなく、長期的な哲学と忍耐が成果をもたらすのです。