はじめに

日本は、少子化・人手不足の常態化、インフレの継続、そして賃上げが中小企業まで十分に浸透しない状況にあり、日本経済が抱える構造的な課題と短期的な変動要因が複雑に絡み合っている。加えて、トランプ政権の関税政策という海外からの大きな不確実性も加わっている。

そこで本稿では、これらの状況を踏まえ、2025年の総括と2026年の日本経済を展望する。

2025年の日本経済総括

2025年の日本経済は、「緩やかな回復の途上にあったものの、外需の不確実性と内需の力強さ不足が並存した一年」として総括される。実際、2025年の実質GDP成長率はIMF(10月)・OECD(12月)の予測でいずれも+1%を超え、0%台半ばとされる潜在成長率を上回るプラス成長が見込まれている。ただし、四半期ベースで見ると、アメリカの関税政策の影響や内需の弱さから7-9月期にマイナス成長となる局面が確認されている(図表1)。

一方、CPIコアインフレ率は+2%台半ば~3%台で推移し、日本銀行が目指す2%の物価目標を上回る状態が続いた。特に、食料品価格の上昇がCPIを押し上げたが、伸び率のピークアウトや原油安などにより、年後半にかけては徐々に上昇ペースが鈍化した。また2025年春闘では、構造的な人手不足も背景に+5%を超える高い賃上げ率となったが、物価高に実質賃金の上昇が追いつかない「実質賃金のマイナス」の状態が長く続き、個人消費の回復が妨げられた。賃上げが中小企業や非正規雇用まで十分に行き渡らなかったため、所得環境の改善が消費につながる好循環は限定的だった。

こうした中、トランプ政権の関税政策が輸出の重石となり、特に自動車などへの高関税が日本経済の成長を下押しする主要因の一つとなった。しかし、企業が価格調整を行うなどの対応策や、米国経済の予想外の底堅さから、関税による景気への影響は限定的であった。