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要旨
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〇2025年の日本経済は、「緩やかな回復の途上にあったものの、外需の不確実性と内需の力強さ不足が並存した一年」として総括される。トランプ政権の関税政策が輸出の重石となり、特に自動車などへの高関税が日本経済の成長を下押しする主要因の一つとなった。しかし、企業が価格調整を行うなどの対応策や、米国経済の予想外の底堅さから、関税による景気への影響は限定的であった。
〇2026年は、「実質所得の改善と内需の回復期待が高まるが、高市政権の経済政策と世界経済の動向が鍵を握る年」となることが予想される。特に、関税措置の影響が一服し、11月の米中間選挙に向けて米経済の持ち直しが見られれば、外需は回復に向かうことが期待される。賃上げ効果が実質所得に反映されやすくなることで、実質賃金がプラスに転じることが予想される。これにより、長く停滞していた個人消費が徐々に回復することが期待される。
〇こうした動きは日銀の追加利上げを促す可能性がある。26年は安定して実質賃金の伸びがプラスになることが展望されるため、物価と賃金の好循環が実現したとして、日銀は中立金利とされる1%に向けて1~2回の追加利上げに動く可能性がある。
〇経済対策のマクロ経済全体に対する効果(内閣府試算)として消費者物価を2~4月に▲0.7%、5~12月に▲0.3%押し下げ、実質GDPを年成長率換算で+1.4%押し上げると示されているが、25年度の補正後国債発行額は昨年度を下回る見込みで、一定の財政規律は維持されている。
〇26年は5月にパウエルFRB議長が任期満了となり、ハト派の議長が任命されることになれば、今以上にドル安圧力が強まることが予想される。トランプ減税の中でも特に法人減税の効果もあり、26年の米国経済は、前回のトランプ政権下で関税が発動された翌年と同様に堅調に推移する可能性がある。追加関税2年目の11月の中間選挙に向けて、トランプ氏はなりふり構わぬ姿勢で景気を支えることになる。
〇トランプ政権の関税動向や、地政学的なリスクが世界経済を下押しした場合、日本の景気回復シナリオは容易に崩れる可能性がある。また、「賃上げが中小企業まで十分に浸透しない」という構造的な問題が解決しない限り、持続的な経済好循環の実現は難しいと言える。
日本の実質賃金プラス転換が消費を変えるか―2026年日本経済のメインシナリオとリスク要因を解説
国内外を覆う不確実性によって景気や市場を見通すことは困難を極めています。そこで国内屈指の著名エコノミストである、第一生命経済研究所の経済調査部で首席エコノミストの永濱利廣氏に、経済・市場の今後を読み解く手がかりになるテーマについて解説していただきました。※本稿は、12月9日掲載の第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト、永濱 利廣氏のレポート「2026年の日本経済展望~注目は春闘&日銀、経済対策、トランプ政権~」を抜粋・再編集したものです。
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