東証市場改革は、総仕上げの段階へ
日経平均株価が5万円台に乗せてきた原動力は、もちろん2022年以降の持続的なインフレ、円安にともなう輸出企業の業績好転、NISAの制度見直しなど複合的にな要因が考えられますが、東京証券取引所が率先して行ってきた市場改革も、大きな要因として考えられます。
そもそも株価の上昇に弾みがついたのは、2023年3月に東証が「PBR1倍割れ」企業等に対して、株価や資本コストを意識した経営をするよう求めたことに端を発しています。
東証市場改革の流れをたどると、発端は2022年4月の市場再編にあります。それまで東証一部、二部、マザーズ、JASDAQと4分類されていた株式市場を、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3分類とし、特にプライム市場上場企業に対しては、時価総額の大きな企業を対象とし、より厳しい上場維持基準を課すようになりました。
2023年3月は、前述したようにPBR1倍割れ企業等に対する是正要請が行われました。プライム・スタンダード上場企業に対して、「資本コストや株価を意識した経営」を強く要請したのです。これによって、特にPBRが1倍を大きく割り込んでいる企業が、手っ取り早く1倍を回復させるために、自社株買いや増配を積極的に行う可能性が高いという見方から、バリュー株が大きく買われました。これが株価上昇の起爆剤になったのは事実です。
そして今、東証市場改革は総仕上げの段階に入っています。
具体的には、2022年の市場再編が行われた際に設けられた「経過措置」が、2025年3月以降に到来する各上場企業の決算期末をもって終了し、その時点で上場維持基準を満たせなかった企業は、1年間の「改善期間」を経て、それでも満たせないという場合は、市場からの退場プロセスが始まります。
特に、大きな判断を迫られるのがプライム市場上場企業でしょう。というのも、プライム市場に上場していること自体が、上場企業にとってある種の「ブランド」になっているからです。日本を代表する企業であり、その株式は高い流動性と、優れたガバナンスを持っていることの証でもあるからです。プライム市場の上場維持基準は、以下のようになります。
① 流通株式時価総額が100億円以上
② 流通株式比率が35%以上
③ 売買代金が1日2000万円以上
④ 株主数が800人以上
⑤ 流通株式数が 2万単位以上
というものです。
要するに大勢の投資家から支持され、かつ日々活発に株式市場で売買されていることが条件になります。
3月末決算のプライム市場上場企業は2026年3月末までの改善期間中に、これらの基準を満たせなかった場合、上場廃止に向けた手続きに入ります。そして2026年4月以降、監理銘柄・整理銘柄になります。約6カ月程度は売買できるので、自分の持っている銘柄が監理銘柄・整理銘柄入りした場合、この半年間が最後の売り抜ける機会となります。
そして2026年10月あたりから上場廃止になり、それ以降は東証での売買はできなくなります。
プライム上場企業が上場廃止を避け、その後も株式を売買できるようにするためには、スタンダード市場に移行させるという手があります。その場合は、事前にスタンダード市場への市場区分変更を行い、スタンダード市場の上場維持基準を満たせるかどうかの審査が行われます。
もちろん、スタンダード市場の上場維持基準を満たせていれば、そのままスタンダード市場に移行して売買できるようになりますが、スタンダード市場の上場維持基準も満たせない場合は、いよいよ行き場を失います。なぜなら、スタンダード市場からグロース市場への移動は認められていないからです。
もともとグロース市場は、「高い成長性を有しているが、事業リスクも高い新興企業向け」の上場市場です。つまりプライム市場の上場維持基準を満たせず、かつスタンダードの上場維持基準すらも満たせない企業が、どうして「高い成長性を有しているのか」ということなのです。結果、スタンダード市場の上場維持基準も満たせないことになった企業には、上場廃止の道しかなくなります。
