減益なしの優等生、優良物件への厳選投資で収益盤石

ヒューリックは大手の不動産会社です。オフィスを中心に不動産の賃貸や販売を手掛けるほか、不動産開発も展開します。売り上げは不動産株のなかでは中規模ながら、株式市場の評価は高く、時価総額では上位に入る大型株です。

【主な不動産株の時価総額(25年11月17日終値)】

・三井不動産:4兆8213億円
・三菱地所:4兆98億円
・住友不動産:3兆3346億円
・ヒューリック:1兆2654億円
・大東建託:9856億円
※株式数(自己株式除く)は25年9月末

高い評価の背景には、先述した業績の高い安定性があります。ヒューリックは2012年の昭栄との統合後、通期で利益を減らしたことがありません。それも、営業利益から純利益までの各段階利益で減益がなく、毎期で最高益を更新しています。

ヒューリックの業績(2012年12月期~2024年12月期)
 
出所:ヒューリック 決算短信より著者作成
 

安定した業績は優良物件への集中投資が奏功しています。重点エリア(銀座、新宿東口、渋谷・青山、浅草)を軸に、主に東京23区内で約250件の物件を保有または管理しています。立地もよく、住宅等を除けば7割以上が最寄り駅から徒歩5分以内に位置します。優良物件への集中は稼働率にも表れており、東京23区内に限れば空室率は0.3%と極めて低水準です(24年末)。

物件の調達にはCRE(企業不動産)事業も貢献します。CRE事業は、企業の保有不動産を活用するビジネスです。これまでセールアンドリースバック(※)を通じ、電通の本社ビルやアパレルメーカーのオンワード樫山の芝浦オフィスビル(底地)などを取得してきました。ヒューリックは、企業の資産活用ニーズの受け皿となることで、市場に出回らない好物件にもアクセスしています。

※セールアンドリースバック…不動産の所有からリース(賃貸)への切り替え。売り手は不動産を手放すことで売却代金を受け取り、買い手にリース料を支払うことで同一不動産の使用を継続する

不動産収益は当面、拡大が見込まれます。都心を中心に開発物件の多くが竣工を迎えるためです。27年までに29件、資産総額4400億円が完成する予定で、計画には次世代アセットに据える都心型データセンターや研究施設なども含まれます。収益の押し上げのほか、ポートフォリオの多角化による安定性の向上にも期待できます。