米国ではデフォルトIRAを設定することも可能

自動移換を減らすために、2015年には「自動移換前移換」「自動移換後移換」という仕組みができました。それでも自動移換者の増加傾向にはどめはかかりません。「自動移換前移換」は、移換手続きを忘れてしまった人が、転職先で企業型DCの加入者になったり、iDeCoへの加入手続きを行うと、自動移換になる前の段階で、資産を移すことをいいます。

2024年度にこの方法で自動移換を防いだ人は5万8,323人でその資産額は405憶円でした。一方、2024年度に新たに自動移換になった人は15万5,913人と約3倍です。自動移換前移換は一定程度、役割を果たしていますが、毎年15万人ほどが新規で自動移換になっています。

なお、日本のDC制度がお手本とした米国401(k)制度では、次のような選択肢を企業ごとに設定することが可能になっています。

①引き続き企業型DCのプランに残す
②デフォルトIRA(Individual Retirement Account)を設定して、そこに移す
③現金で払い出す

②、③を本人の同意なく行うためには資産額の上限が定められており、②は資産額7000ドル以下の場合、③は資産額1000ドル以下の場合と限定されています。

②のデフォルトIRAは事業主が指定するもので、元本確保型商品である必要があります。

事業主は退職者に対し、退職の一定期間前に移換をするかどうかの決定を求め、本人が選択しない限り、現金化またはデフォルトIRAに移換されることや税制上の不利益があることを説明する通知を行うことになっています。

日本のDCは2025年10月に制度創設25年を迎えました。自動移換問題は制度の根幹である「自ら手続きを行う」ことの限界を示しているようにも思えます。移換資産額が0円の場合は加入者データ自体を削除するといった方策も検討されてよいのではないでしょうか。

また、「デフォルトiDeCo」を設定することで、宙に浮く資産を減らすことができると想定されます。事業主にも加入者にも、より使い勝手のいい制度に変わっていく必要があると思われます。