「自動移換」のリアル
2025年3月末の自動移換者数は、138万人と過去最高です(うち60万人は移換資産額が0円)。自動移換された資産額は3,300億円にのぼり、金額ベースでみても年々増加傾向です。
〈60万人が移換資産額0円なのはなぜ?〉
企業型DCを退職金制度の一部として位置づけている事業所の場合、勤続年数が3年未満等(最長で3年間。2年、1年等の事業所もある)で退職した場合、事業主掛金は事業主に返還するという設定をしているケースがほとんどです(加入者掛金を拠出している場合は資産額が0円になることはほぼない)。
その結果、勤続年数が3年未満等で退職すると、移すべき資産が0円になってしまう人が多いのが現状です。
〈金額が多くても自動移換になるのはなぜ?〉
自動移換された金額(3,362億円)を移換資産ありの人数(77万8,086人)で割ると、平均43万円にもなります。金額が大きいにもかかわらず、自動移換になる理由は次のような3点が考えられます。
①企業型DCの存在を知らない
企業型DCの存在自体を認識していないという方も一定数、想定されます。
運営管理機関として継続教育を久しぶりに実施した場合のアンケートでは、「そもそも制度のことがわからない」という意見を聞く機会も多く、「何をしたらいいのか不明」といった声を聞くこともあります。
②手続きがわからない
2025年9月に公表された調査※によると、転職をして企業型DCの資産移換をしなかった人の理由として最も多かったのが「やり方がわからなかった」で31%、次いで「ルールを知らなかった/自分で手続きすることを知らなかった」が21%となっています。
なお、資産移換しないことで生じるデメリットを知らない人は60%を占めています。
③自動移換された状態のほうが手数料が安かった
以前はiDeCoに自ら資産移換するよりも「自動移換」状態のほうが手数料が安いことがありました。そのため意図的に自動移換を利用するニーズもあったといえます。その後、自動移換手数料の見直しが行われ、あわせてiDeCo手数料を引き下げる金融機関が相次いだため、現在ではその状態は解消されています。
2026年4月から変更になる自動移換の手数料
また2026年4月には移換手数料が再度、変更になります。毎月の管理手数料が52円から98円に値上がりする一方で、自動移換状態を解消する際の移換手数料が1,100円から550円に引き下げられます。この自動移換状態から出ていく場合の手数料を引き下げることで、企業型DCやiDeCoへの資産移換を行いやすくするためと考えられます。
なお、この変更は2026年4月からですが、実際にはもっと前から注意が必要です。たとえば2025年6月に資格喪失者となった場合、何も手続きをしなければ毎月の管理手数料が98円に値上がりすることになります。いつから値上がりするかは自動移換になるまでの猶予期間を勘案する必要があります。
具体的には、資格喪失の属する月の翌月から数えて6カ月経過後に自動移換となり、毎月の管理手数料が自動移換された日の属する月の4カ月後から発生します。
つまり、2025年6月の資格喪失者は、同年12月末までに不備なく手続きを終えなければ、翌2026年1月から自動移換になり、管理手数料は同年5月から発生することになります。
なお、企業型 DCから自動移換されるときにかかる新規自動移換手数料(4,348 円)に関しては変更はありません。あくまで自動移換となった状態から再度、企業型DCやiDeCo、確定給付企業年金(DB)へ資産移換を行う際にかかる移換手数料が改定されるという点に注意が必要です。
※出所:「確定拠出年金3万6000人調査」浦田経営金融ラボ合同会社/確定拠出年金・調査広報研究所
