AIがデータセンターと再エネに追い風 シェア首位の製品群にチャンス
まずは概要を解説します。
三菱電機は総合電機メーカーです。「霧ヶ峰」といった家庭用エアコンから、発電プラント向けの大型機器や防衛システムなど、有形・無形を問わずあらゆる領域で事業を展開しています。株式市場でテーマ化する多くの分野にも関わりがあり、AIやエネルギーなどで関連株に数えられます。
【三菱電機が関連する主な市場テーマ】
・防衛:防衛装備庁の契約額3位(4956億円、24年度中央調達)
・AI基盤、データセンター:無停電電源装置および光デバイスでトップシェア
・AI活用:デジタル基盤「セレンディ」の事業および社内業務への活用
・原子力:制御設計の小型原子炉が初号機受注、発電機を三菱重工業と統合(※)
・直流送電:パワー半導体モジュールで世界シェア首位
※統合会社(三菱ジェネレーター)の出資比率は三菱電機が51%、三菱重工業が49%
【セグメント情報(25年3月期)】
※DC…データセンター、FA…工場自動化
三菱電機とAIの関わりは、主にデータセンターに関連する事業です。先述の「日米間の投資に関する共同ファクトシート」でも、想定する投資先としてデータセンター向けの発電システムや機器が記載されました。データセンターは広範なインターネット上のサービスで利用されますが、近年はAIの需要が増加しています。
三菱電機はデータセンターの有力企業です。自らデータセンター子会社を所有するほか、データセンター向けの製品を多数手掛けます。
主力製品の1つが光デバイスです。情報と電気信号を変換する電子部品で、世界シェアは首位です。光デバイスは、データセンターの内部と外部の光通信に用いられます。また、無停電電源装置(UPS)や蓄電池、冷却設備といった製品も統合的に提供しており、データセンターの成長は収益機会となります。
データセンターに関連し、直流送電向け事業も注目です。三菱電機は、高圧直流送電(HVDC)向けのパワー半導体モジュールも世界トップのシェアを有します。同製品は電流の交流と直流の変換に用いられます。
データセンターは大量の電気を使う事業です。国際エネルギー機関(IEA)によると、AIの普及を背景に世界のデータセンター電力消費量は30年までに倍増し、現在の日本の総消費量に匹敵するとしています。そして、データセンター向けの追加需要の半分は再生可能エネルギー発電がまかなう見通しです。
再生可能エネルギー発電からの送電は直流が選択されてきています。一般的な送電は交流ですが、交流送電はロスが大きく長距離に向かない技術です。再生可能エネルギーの発電所は洋上など需要地から離れて設置されることが多く、長距離送電が求められます。
直流は長距離送電に向く特性を持ちながら、技術的課題などから歴史的には交流が選択されてきました。しかし、現在は技術の発展により課題はクリアされてきています。データセンターが増え、さらに再生可能エネルギー発電が増加すれば、三菱電機の直流送電事業には追い風になると考えられます。
