運用状況の可視化が見直しのきっかけに
アプリの利用状況や施策の効果は、社長、人事担当、アプリ担当者のメンバーで継続的に分析・検証しています。戦略的にさまざまな工夫を積み重ねた結果、アプリ導入時はログイン率が約30%だったところ、現在は約80%まで上昇しました(図1)。
継続投資教育の最大の成果は、元本確保型商品のみ選択者の割合が、大幅に減少したことです。2022年9月時点では45.6%(20代では65.8%)だったところ、2025年3月には20.0%(20代では19.3%)まで減少しました。2023~2024年の新入社員に限定すると、元本確保型のみで運用を行う加入者は1人もいません。
最近、これまでアプリを使っていなかった社員からも「忙しさにかまけてDCのことを後回しにしていたが、ふと届いたメルマガをきっかけにログインして、自分のスコアの低さに驚いた。同僚の状況を見て危機感を持ち、運用を見直した」といった声を聞くことができました。
これまで多くの社員は、「自分のDC運用は適切なのか」「何か問題があるのか」といった不安を抱えながら、行動に移せずにいたのではないかと感じています。アプリを通じて自身の運用状況がスコアとして可視化されたことで、漠然とした不安が具体的に把握でき、見直しのきっかけになっていると思います。
また、アプリには定年時に受け取れるDC資産のシミュレーション機能があり、マッチング拠出をする場合・しない場合の金額の差も見ることができます。こうした機能を通じて老後資金として使える金額が具体的にイメージできることで、自分ごと化も進んでいる印象です。実際、マッチング拠出の申込割合も2021年には15.0%だったところ2025年には32.2%まで増加しました。
今後の課題は加入者の多様なニーズに対応していくことです。年齢やライフステージ、金融リテラシーのレベルによって必要な情報は大きく異なるため、今後はFPによる個別相談をより充実させていくことを検討しています。個々の状況や悩みに応じてアドバイスを受けられる場として、より実効性のある投資教育を実現したいと考えています。特に、これから資産形成を本格的に始める若手社員や、ライフイベントを迎える中堅層にとって、個別相談は大きな安心材料になるはずです。
一人で背負い込まず、社内外のサポートの活用を
DC担当者は幅広い業務を抱えており、継続教育だけに集中するのは難しいものです。だからこそ一人で背負い込まず、使えるサポートは最大限活用していくことが重要だと感じます。また外部ツール・アプリの導入など、「仕組みで支える」ことも有効な手段です。
私たちDC担当者は地道ながらも社員の人生に長く関わる大切な役割を担っています。限られた時間とリソースの中で思うように進められないこともありますが、加入者がDC制度を理解し、資産形成に向き合えるようになることは、その人の将来の安心につながり、ひいては企業にとっても大きな価値になると信じています。これからもお互い無理なくできることを少しずつ進めていきましょう。
会社概要 本社:東京都港区 業種:システム構築事業 加入者数:572名
(2026年1月1日より電通総研テクノロジーに社名変更)


