近年、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出す人的資本経営が注目されている。その観点からも企業年金の一つである企業型確定拠出年金(DC)制度の充実は、従業員の活躍やエンゲージメントを高める一因として企業価値の向上に資することが期待されている。企業型DC制度運営に熱心な企業はどのような取り組みを行い、そしてどんな成果を実現しているのか。DC制度運営に秀でた企業に贈られる「2025年DCエクセレントカンパニー」継続教育部門において優秀賞に輝いた電通総研ITの取り組みを紹介する。
電通総研ITが企業型確定拠出年金(DC)の継続投資教育で成果を上げている。特筆すべきは元本確保型のみを選択する加入者の割合が、2年半で45.6%から20.0%まで減少した点だ。同社では加入者にDC専用アプリの活用を促し、元本確保型偏重の課題に対処してきた。「誰も取り残さない」という理念のもと実施された取り組みから、効果的な継続投資教育の秘訣を探る。
元本確保型偏重への問題意識からDC専用アプリ導入を決定
当社はDCと確定給付企業年金(DB)を併用しています。社員の年金資産の割合はDCが約8割、DBが約2割です。DBは全国情報サービス産業企業年金基金(JJK)に加入しています。M&Aにより電通総研グループとなった経緯がありますが、JJKへの加入は前身企業の時代から続いています。
継続投資教育に注力した背景には、加入者のDC掛金が元本確保型に集中していた状況がありました。2022年9月時点では全社員の45.6%が元本確保型のみを選択しており、20代では65.8%にも達していました。経営層を含め、この状況は明らかに問題だと認識していました。
対策の1つとして、2021年に親会社の電通総研が開発したDCの専用アプリ『お金のシェルパ』を導入しました。このアプリは、加入者がリスク許容度診断に基づいた資産配分と現在の資産配分とを可視化して確認できる機能があります。また、運用状況がマッピングされるので自分の位置を同僚と比較することもできます。運用への改善意識が生まれやすく行動を促す仕掛けがあったことから、まさに当社の課題解決に有効だと考え導入を決めました。
